世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長が2020年4月8日、台湾から人種差別的な人身攻撃を受けたとし、記者会見にて長々と批判を展開する一幕があった。
台湾のネットユーザーからは「頭が追い付かない」「なんで?」と困惑の声が多数寄せられている。
蔡総統「いつか台湾の土地を踏むことが出来たなら...」
テドロス事務局長はスイス・ジュネーブで行われた記者会見にて自身に対する侮辱の言葉がインターネット上に広まっており、「この攻撃は3か月前に台湾から来た」「台湾は人種差別を行っている」と名指しで批判した。
この発言に対し、台湾の蔡英文総統は自身のフェイスブックで9日、「台湾が国際社会上で人種差別を行っていると批判された件について、私はここで強く抗議致します。皆さん、真実を世界各国の友人に伝えてください。同時に、ネット上で各国の言葉にこの文章を翻訳してくださることを歓迎します。共に台湾が置かれる立場を発信しましょう」と前置きし、
「台湾はどのような形であろうが差別に反対している国です。何故なら、私たちは長期にわたり国際社会から排除されており、差別されること、及び孤独である辛さを誰よりも知っているからです。WHOのテドロス事務局長が中国の圧力に屈さず、いつか台湾の土地を踏むことが出来たなら現在私たちが行っている防疫対策が如何なる努力の上に成り立っているものか、そして長らく不公平な待遇を受けていたのが台湾国民であることがわかるはずです」
と声明を発表。台湾外交部(外務省)も9日、WHO側に謝罪を要求している。
3か月前は台湾では「テドロス氏知らなかった」
そんな騒動を台湾のネットユーザーはどう思っているのだろうか。ニュースが発表された直後は、ツイッターやフェイスブックに「は?」「ちょっと意味がわからない」「何故今になってテドロスが突然台湾にキレ出すの?」と困惑するコメントが寄せられたが、その後徐々に怒りの声が集まりだした。
テドロス事務局長が言う「3か月前」1月上旬、台湾は総統選挙の話題一色で、世間一般は新型コロナウイルスのことなど気にかけていなかった。もちろん、「テドロス事務局長」という存在を知る人もわずかだっただろう。
そういった経緯から、彼の「この攻撃は3か月前に台湾から来た」という発言に対し「3か月前お前は無名だったはずだ...」「選挙で忙しかった時期じゃん。知らねーよw」といったツッコミが続出し、仕舞いには「台湾からの攻撃?飯テロでもされたの?」と台湾グルメの写真を連投する者も現れた。
中には「おっと、俺たちいつ独立したんだ?」「また知らぬ間に独立してしまった」などの皮肉めいたコメントも見受けられた。怒りをギャグに昇華しつつも、抗議の声をあげるスタイルが主流となっているようだ。
(フリーライター 室園亜子)