緊急事態宣言を行った安倍晋三首相が、医師らと並んで現場で奮闘する臨床検査技師に感謝と敬意を示したことで、その仕事ぶりに注目が集まっている。
新型コロナウイルスの感染拡大防止に、技師が手がけるPCR検査の重要性が日に日に増している。現場の状況は、どうなっているのだろうか。
検査を倍増させて1日2万件、果たしてこなせるのか
「まず冒頭...」。2020年4月7日夕、会見場に入ってきた安倍首相は、軽く深呼吸をしてマスクを外すと、前を見据えて話を切り出した。そして、こう続けた。
「全国各地の医師、看護師、看護助手、病院スタッフの皆さん、そして、クラスター対策に携わる保健所や専門家、臨床検査技師の皆さんに、日本国民を代表して、心より感謝申し上げます」
安倍首相は、これらの人たちが最前線で献身的な努力をしているとして、「心からの敬意を表したい」と重ねて強調した。
この模様は、テレビ各局が中継し、ツイッター上では様々な意見が書き込まれた。
そんな中で、ある職業について安倍首相が触れたことに、驚きの声が上がった。
「おぉ!安倍総理が検査技師に敬意を表してる!」「最後に臨床検査技師のみなさんって言ってくれた...」「どういたしまして」「明日も怖いけど頑張って働くわ」...。
どうやら、技師らがテレビを見て書き込んだらしい。「臨床検査技師って、スポット当たることなかなかないからなぁ」との声も漏れ、中には、思わず涙が出たとの告白もあった。それだけ、感染拡大防止に日々悪戦苦闘しているわけだ。
PCR検査を巡っては、なかなか数が多くならないとされたりするなど、議論の的になってきた。安倍首相は6日、検査を倍増させて1日2万件にすると表明したが、本当にそれだけの数をこなせるのだろうか。
「やるのは当たり前。激務だとか言っていられない」
PCR検査については、患者の鼻の奥から検体を採取する作業も、5年前から臨床検査技師の業務になった。機械にかけて検査結果を出すまで、基本はすべて技師がやる作業だ。
まず医療機関で検体を採取して、国立感染症研究所や地方の衛生研究所に持ち込んで検査を行う。現在は、保健所や民間検査機関でも行う方向になっている。
日本臨床衛生検査技師会は4月8日、検査には熟練した技術が必要だとして、担当者がJ-CASTニュースの取材にこう説明した。
「肉眼で画像として見えるように、遺伝子を増幅させるわけですが、検査にふさわしい状態にまでするのは難しい作業ですね。技師は、国に20万人登録して、そのうち8、9万人が働いていますが、1割に当たる9000人ほどが遺伝子の検査ができます。しかし、すぐにできるわけではなく、本来は、時間をかけて熟練しなければいけません」
さらに、臨床検査技師には大きな負担がかかると言う。
「採取した検体20本ほどを1回で検査しますが、4時間ぐらいかかります。それを1日で2、3回やることになれば、長時間労働になるでしょう。また、すでに病院で通常の検査業務をしており、ほかの患者さんのことも考えないといけません。PCR検査には感染リスクもありますので、そこも心配ですね」
ただ、2万件の検査をこなすことについて、こう言う。
「それでも、やるのは当たり前だと考えています。激務だとか、そんなことは言っていられませんよ。長丁場になると思いますので、体調面で心配もあり、技師へのケアも考えていかなければ。早くワクチンや治療体制ができて、元通りの日常を取り戻すことを願っています」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)