楽天モバイルの自社回線(MNO)が、2020年4月8日から本格的にサービスを開始した。
くしくもこの日は、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、7都府県に出された「緊急事態宣言」下の暮らしが始まる初日でもあった。楽天にとっては「静かな船出」となったが、さっそくサービスの改善が発表され、ユーザーの注目を集めている。
三木谷氏「日本をもっと元気にしていきたい」
楽天モバイルショップ(実店舗)は4月2日から、8都府県での臨時休業を進めていたが、6日より全国での順次休業を始めた。同社ユーザーからの申込は「約9割がオンライン経由」だとして、ウェブでの手続きを呼びかけている。
首相会見の余波もあった。7日の「ガイアの夜明け」(テレビ東京系)では、「楽天の野望」と題して、携帯事業参入が取り上げられる予定だったが、緊急事態宣言の報道特別番組のため、14日の放送に延期されている。
本来であれば、華々しいスタートになるはずだった8日午前、楽天はMNO唯一のプランである「Rakuten UN-LIMIT」(税抜2980円/月、300万人を対象に1年間無料キャンペーン中)を「2.0にバージョンアップ」すると発表した。
Rakuten UN-LIMITはこれまで、楽天自社回線エリアではデータ通信無制限だが、KDDI回線を利用する「パートナー回線エリア」では月2GBを上限とし、それを超えると通信速度が最大128kbpsに低下するとしていた(500円/GBでチャージも可能)。これを月5GB(22日から)、超過後最大1Mbps(8日から)に引き上げるのが「2.0」の概要だ。
改訂の理由として同社は、在宅ワークやオンライン学習事情をあげている。楽天モバイル会長兼CEOの三木谷浩史氏は、「日本をもっと元気にしていきたいと思っています」とのツイートで、「2.0」の意気込みを示した。
目下の課題は「自社エリアの狭さ」
楽天モバイル目下の課題は、自社エリアの拡大だ。自社サイトの「楽天回線エリア」リストにある自治体は、関東・中部・関西の9都府県のうち、ほぼ一部の都市圏に限られている。そのため基地局網が整備されるまでは、パートナーエリアでの通信上限と制限速度が、快適さのカギとなる。
超過後の1Mbps上限には前例がある。楽天モバイルはこれまで、自社で回線を持つのではなく、他社から通信回線を借りる「MVNO」だった。そのプランのひとつである「スーパーホーダイ」では、データ容量を使い切った後も最大1Mbpsで利用できる(一部例外の時間帯あり)。
MVNOの新規契約は、本格サービス開始に合わせて、前日の4月7日をもって終了した。今後は順次、MNOへの移行が進められるが、従前の経緯もあり、切り替えを躊躇(ためら)っていたユーザーもネット上には見受けられる。「早めに乗り換えても『うまみ』がない」と感じていた中には、今回の改訂により、スーパーホーダイのプランM(2GB・2980円)と同じ価格水準で、1MbpsのKDDI回線が「使い放題」となると喜ぶ声もある。
通信網が「ベータ版」では意味がない
筆者は2月から、先行モニターの「無料サポータープログラム」で、楽天MNOを利用してきた。「第4のキャリア」を目指す楽天へのエールも込めて、十数年使用しているメイン回線をMNP(携帯ナンバーポータビリティー)で移行する大勝負に出たが、お世辞にも満足に使えているとは言えない。
ひとたびつながれば、高速でデータ通信できる。月額約3000円のシンプルな料金体系も好印象だ。それだけに電波状況の不安定さが気になる。生活圏内はほぼ楽天回線エリアだが、基地局の狭間にあるのか、圏外になる場所が多々ある。自宅ではどの部屋でも基本的に繋がるが、ある日、社外関係者とのLINE通話中に電波が乱れてからは、念のため窓際(ウチでは台所が入りやすい)に移動するようにしている。
今回、Rakuten UN-LIMITがバージョンアップしたが、これはあくまで料金プランの話だ。ベースになる通信網が「ベータ版」であれば、その価値は十分に発揮できない。楽天は今年度末までに、全国へエリアを広げるとしている。こちらのメジャーアップデートが早くも待ち遠しい。
(J-CASTニュース編集部 城戸譲)