JR北海道の札沼線の廃線区間で、廃止直前であるにもかかわらず列車の増発が行われるという「珍事」が起きる。
乗客が少ないため廃線になる区間で増発をするという一見矛盾した珍事が生じるが、廃線間際にファンが押しかける事情を考慮しているようだ。
1往復から増発、通過運転も
札沼線(学園都市線)は札幌から新十津川(新十津川町)を結ぶ路線である(実際の起点は桑園駅)。うち北海道医療大学~新十津川間は2020年5月6日限りでの廃止が決定している。
この廃止区間の末端部、浦臼~新十津川間の列車本数は通常1日1往復しかなく、新十津川9時28分着の下り普通列車(5425D)と、同駅10時発の上り列車(5426D)だけである。このため新十津川駅には「日本一終電が早い駅」の通称もあった。
列車が午前中の1往復しかないために、各地のあらゆる鉄道路線に乗車する、いわゆる「乗りつぶし」をしたい鉄道ファン「乗り鉄」にとっては難易度の高い区間である。通常の5425Dを使うには札幌駅を6時58分に出る列車に乗らなければならない。
そして廃線が近づくと、廃線区間を記念に乗っておきたい「葬式鉄」というファンが増えるのも鉄道ではよくあることだ。
この区間で、JR北海道は増発を行う。4月11日から26日までの土日と、ゴールデンウィークにあたる4月29日から5月6日まで、石狩当別発浦臼止まりの列車を新十津川まで1往復延長運転する。この列車は新十津川に13時9分着、14時6分発というダイヤである。さらに廃線当日の5月6日には増発した最後の列車(9430D)は一部の駅にしか停車せず、事実上の快速運転となる。さらに2日から6日には石狩当別~新十津川間の列車はすべて「全車指定席」として運転する。いずれも「葬式鉄」に備えての増発をうかがわせる。