新型コロナウイルスの影響はあらゆる産業に及びつつあるが、鉄道も例外ではない。
日本の鉄道でも乗客が減少し、鉄道事業者の経営をもおびやかしかねない。特に懸念されるのが、もともと経営が苦しかったJR北海道・JR四国・JR九州の3社である。
通勤通学・観光ともに落ち込み
JR旅客6社のうち、本州を除く「三島会社」と呼ばれるJR北海道・JR四国・JR九州は人口の少ないエリアをカバーするため、経営基盤の弱さがネックになっていた。このうちJR九州は多角化で経営基盤を安定させて、16年10月に完全民営化と株式上場を果たしている。
軌道に乗ったかに見えたJR九州を含めて、新型コロナウイルスの余波はこの三島会社も直撃した。
JR四国は2020年3月31日に発表した2020年度の事業計画で、12億円の経常赤字を見込んでいる。通勤・通学輸送と長距離輸送が共に落ち込み、3月の運輸収入は前年同期の半分以下となった。
状況はJR北海道も似ている。北海道は中国人観光客の利用が多かったが1月以来この層は激減、また2月28日から3月19日まで鈴木北海道知事が緊急事態宣言を行ったことが影響して特急の運休・減車などが行われている。
九州新幹線を運行するJR九州でも既に影響が出ている。4月6日から5月6日までの間に合計700本以上の新幹線・在来線列車の運休を決め、豪華列車「ななつ星」も含まれている。
株主の存在が影響する?
当然、乗客の減少は各社に打撃を与えるが、既に不透明な先行きが伝えられている。JR北海道とJR四国のみならず、JR九州の動向にも注目だろう。
完全民営化されて民間企業となったJR九州では、経営面で「株主」を意識しなければならない。現在も鉄道事業自体は大半の路線は赤字のままで、小売・外食・不動産などの関連事業で稼いできた。利益だけを追求するなら、鉄道はすでに同社にとって「お荷物」になっている。そして鉄道事業を補う関連事業の方も、不要不急の外出を控える動きで落ち込みが予想される。
コロナ禍以前より、既にローカル線区では列車の減便が行われ、2017年7月の九州北部豪雨で被災した日田彦山線の添田~夜明間で運休が続いているが、BRT(バス高速輸送システム)への転換を主張するJR九州・福岡県・大分県と、鉄道での復旧を主張する地元自治体の間で議論が続いている。
鉄道と株主をめぐっては、西武鉄道を有する西武ホールディングス(HD)にTOBを行った米投資ファンドのサーベラスが、2013年に西武秩父線・多摩川線・山口線の廃止を提案したことがあった。廃止は実現せず、サーベラスは17年までに西武HDの経営から撤退しているが、JR九州も米投資ファンドのファーツリー・パートナーズなどの海外投資家の持ち株比率が約半数に上っている。
海外ファンドだからローカル線の存続には無慈悲、とつなげるのは短絡的だが、本州三社に比べると経営基盤が弱いながら、同じように民間企業でもあるJR九州では、もともと鉄道の存続にシビアな余地があったといえるだろう。
新型コロナウイルスの感染拡大が収束しても、予期せぬ社会変動に見舞われた場合の鉄道経営はどうあるべきかという課題も今後浮上するかもしれない。
(J-CASTニュース編集部 大宮高史)