株主の存在が影響する?
当然、乗客の減少は各社に打撃を与えるが、既に不透明な先行きが伝えられている。JR北海道とJR四国のみならず、JR九州の動向にも注目だろう。
完全民営化されて民間企業となったJR九州では、経営面で「株主」を意識しなければならない。現在も鉄道事業自体は大半の路線は赤字のままで、小売・外食・不動産などの関連事業で稼いできた。利益だけを追求するなら、鉄道はすでに同社にとって「お荷物」になっている。そして鉄道事業を補う関連事業の方も、不要不急の外出を控える動きで落ち込みが予想される。
コロナ禍以前より、既にローカル線区では列車の減便が行われ、2017年7月の九州北部豪雨で被災した日田彦山線の添田~夜明間で運休が続いているが、BRT(バス高速輸送システム)への転換を主張するJR九州・福岡県・大分県と、鉄道での復旧を主張する地元自治体の間で議論が続いている。
鉄道と株主をめぐっては、西武鉄道を有する西武ホールディングス(HD)にTOBを行った米投資ファンドのサーベラスが、2013年に西武秩父線・多摩川線・山口線の廃止を提案したことがあった。廃止は実現せず、サーベラスは17年までに西武HDの経営から撤退しているが、JR九州も米投資ファンドのファーツリー・パートナーズなどの海外投資家の持ち株比率が約半数に上っている。
海外ファンドだからローカル線の存続には無慈悲、とつなげるのは短絡的だが、本州三社に比べると経営基盤が弱いながら、同じように民間企業でもあるJR九州では、もともと鉄道の存続にシビアな余地があったといえるだろう。
新型コロナウイルスの感染拡大が収束しても、予期せぬ社会変動に見舞われた場合の鉄道経営はどうあるべきかという課題も今後浮上するかもしれない。
(J-CASTニュース編集部 大宮高史)