過去の巨額投資による損失が発生したり、不正会計などが発覚した場合に役員報酬を返還する「クローバック制度」を導入する企業が増えている。
役員報酬引き上げ、とりわけ業績連動報酬の増加に対応し、「トップの暴走」を防ぐ措置といえ、ガバナンス(企業統治)への視線が厳しさを増す中、今後も投資家から同制度を求める声が強まりそうだ。
武田薬品工業での導入で話題
クローバックとは、「çlawback=回収」を意味する。日本で世間に認知されるようになったきっかけといえるのが武田薬品工業。2019年6月の株主総会で、同制度を導入する株主提案があった。結果は否決だったが、この提案は出席株主の3分の2以上の賛成が必要な定款変更(特別決議)だったために成立しなかったが、賛成52%と、過半数を占めていた。
これを受け、武田は検討を進め、2020年4月1日、クローバック制度を同日付で創設したと発表した。定款変更を伴わない社内制度として導入するもので、不正などが発生した年を含め4年分の報酬を返還するよう要求できるとした。
武田が注目されたのは、2019年1月に、アイルランドの製薬大手「シャイアー」を、日本企業のM&A(企業の買収・合併)として過去最大の6兆2000億円で買収したことがきっかけだ。クリストフ・ウェバー社長兼CEOが進める買収戦略があまりに巨額であることから、先行き赤字が続きかねないと懸念する元社員らが「武田薬品の将来を考える会」を作り、株主総会で買収反対論を展開。その一環としてクローバック条項を定款に加えるよう提案したという流れだ。