補償論を叩いて不安を解消しようとする人たち
エンタメ業界への自粛要請といえば、2月26日にはPerfumeとEXILEのコンサートがそれぞれ当日に中止になるなど、2月の終わりから芸能界全体に自粛の動きが広がっている。自粛要請の主体が政府である以上、自粛に応じた芸能人に政府が補償を行うのは当然、との声も強い。
営業中止に追い込まれたエンタメ業界への補償を求める署名運動「Save Our Space」には、3月31日までに30万筆を超える賛同が。ツイッターなどでは、こうした動きがおおむね称賛ムードで受け止められている。
しかし、井口さんに限らず、「ガールズちゃんねる」などでは、こうした話題のトピックは辛辣な声で埋められる傾向が。
この温度差について、経営コンサルタントで心理学博士の鈴木丈織氏は、井口さんへのアンチが好き嫌いで攻撃を行っている例は当然にあるとしつつ、アンチでなくても攻撃的なメッセージを「ガールズちゃんねる」に書き込む者はいると指摘する。
「井口さんに集まっている批判を見ると、『みんなが我慢を強いられてる時に自分の業界だけ特別扱いしろと言うな』といった思いが込められている書き込みが多いように見受けられます。一見すると筋が通っているように見えますが、それだったら、その人たちも『我が業界も補償されるべき』と声を上げる手はあるわけです」
と、井口さんを叩くことの矛盾を指摘。その上で、
「では、なぜそのようにはならないのか。それは、『先が見えない状況での他者への攻撃』は、それ自体がストレス解消の効果を生み、先が見えないことへの不安を確実に和らげることが出来るからです。『補償を要求する』という手段では、実際に補償が行われるまで不安が続きますが、補償を要求する声を叩くという手段は、実行した瞬間に安心感が得られるので手っ取り早く不安を解消できる上、自分こそが、『特別扱いしろと言うな』という新たな『筋が通った話』を振りかざす主体となることが出来るのです」
と指摘する。併せて、
「『意見を叩く』という行為ですが、叩いている者は叩かれる意見を言う人と同じ境遇であることが少なくありません。ゆえに、アンチでもないのに井口さんを叩いている人の多くは、やはり、コロナ騒動で被害が出ている業界の人々なのではないでしょうか」
とも分析した。