情報が日々更新され、対応に追われる新型コロナウイルス禍。厚生労働省のクラスター(感染集団)対策班の押谷仁・東北大教授(ウイルス学)が今後の対策方針を示した資料が「非常にわかりやすい」「当面は行動を変えよう」とSNS上で反響を読んでいる。
押谷氏はJ-CASTニュースの取材に、感染拡大を防ぐためには「全世代」で当事者意識を持つべきだと話す。
爆発的感染以前に「医療崩壊」の懸念も
押谷氏は2020年3月29日、新型コロナの拡大防止に向けたこれまでの取り組みと今後の方針を整理した資料「COVID-19への対策の概念」の暫定版を公開した。主な内容は次の通り(※J-CASTニュース編集部で、4月1日までにわかった情報を補足しています)。
2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)では、ほぼすべての感染者が重症化したため、すべての感染連鎖を見つけて断ち切ることで封じ込めに成功した。
一方、新型コロナは多くの感染者が無症状か軽症で、すべての感染連鎖を見つけることは「ほぼ不可能」だと説く。全体像をつかむには、国民の大半がPCR検査を受けなければならず、医療供給体制などの面から現実的ではないという。政府の専門家会議は4月1日、すでに供給がひっ迫しつつある地域が出てきており、爆発的感染(オーバーシュート)が起こる前に「医療崩壊」に陥る懸念を示している。
押谷氏によれば、日本は現在、感染流行の"第二波"のまっただ中にある。中国湖北省を発端とした"第一波"では、「保健所・自治体・地方衛生研究所・感染症研究所・検疫所・クラスター対策班の若手研究者などの努力でなんとか乗り切ってきた」ものの、第1波の流行の残りに加え、3月以降に海外からの感染流入が激増したため、新たな波が起きたと考えられる。