新型コロナウイルス感染症の影響でライブ・演劇・イベントなどの中止が続いているエンタメ業界で、営業を停止している施設への国からの補償を求めるネット上の署名活動「SaveOurSpace」の発起人が会見を行い、補償のない自粛に苦慮する業界の現状と助成の実現を訴えた。
2020年3月27日から始まった署名には、坂本龍一さん・倖田來未さんら著名なアーティストらも含め30万筆以上の署名が集まっている。
既に閉店・失業が発生、にじむ危機感
Save Our Spaceは音楽業界関係者を中心に立ち上がった署名活動で、安全のために新型コロナウイルスの終息までに中止した興行に関して施設の維持費・制作経費・人件費などの国からの費用助成を求めつつ、施設やイベントの感染症拡大防止に努めることを声明に掲げている。
東京・渋谷のSUPER DOMMUNEから生配信形式で行われた会見では発起人の篠田ミルさん(ミュージシャン)、スガナミユウさん (ライブハウスオーナー)、Licaxxxさん(DJ)、Mars89さん(DJ)の4人が出席した。
自粛が止まらないライブ業界の現状について、スガナミユウさんは「3月を乗り越えられるかどうかというお店もたくさんあります」「お店を閉じることで、照明・音響・出演者など、様々な方が職を失ってしまう事態が既に起きています」
と窮状を訴えた。
また自粛の拡大はエンタメ業界のみならず、クラスター感染の恐れが高いと小池百合子東京都知事が言及した飲食業界にも及んでいることにも言及、
「飲食店さんはどうなんだと、同じじゃないかというお話もいただきました。それもまたひとつ分断を生んでいるような気がします。すべての人にこの問題が降りかかっている中で、私たちは音楽や劇場・アートに携わる人間としてどうにかできないかと、声を上げております。飲食店さんも声を上げております。それぞれやはり必要な措置というのは違うと考えていて、それに応じた助成を行ってほしいと考えております」
と、様々な業界への配慮を求めた。
篠田さんは零細の事業者が多い音楽業界では「感染拡大防止のために閉めたいと思っても、破産してしまうから閉めることができないという踏絵に立たされている」と話し、金銭的な支援を求めた。また
「人間を人間たらしめている文化をはぐくんできたライブハウスやクラブや劇場を守るのは、ひいては我々が人間であることにつながると考えています。これは人間が人間であるために必要な措置だと思います」
と危機感を説明している。
安全回復の前に「場」が消滅してしまうのでは
Save Our Spaceの危機感は、「人が集まって音楽という場所を取り戻せるように」「皆それぞれの大切なものを守りたいという気持ちで参加してくれています」(スガナミユウさん)、「安全に皆が集まれる状況になった時に、その施設が根こそぎなくなってしまう」(Licaxxxさん)というように、新型コロナウイルスの終息までにライブハウスや劇団・劇場といった「場」そのものが消滅してしまうのではないかというものだ。ライブハウス関係に限らず、演劇・アートと様々なジャンルの関係者から署名が寄せられている。
一方で、「個人として、自分の意見をそれぞれが発信していくことが、それぞれが意思をもって発信していくことが重要なんじゃないかと思います」(Licaxxxさん)とも語ったように、エンタメ・芸術業界以外への広がりにも期待をにじませた。 「今サービス業は全ての業種がSave Our Spaceであって然るべきだし、その声を上げないといけないと思っています。正直言って俺は俺の生活を守りたい。それは間違っていて恥ずかしいことでしょうか」というコメントも読みあげられ、「終息後の先行きも不透明で、返済できるかの確約もない」ために、貸付型の融資ではない補償を様々な業界が求めていくことにも出席者は期待を寄せた。
Save Our Space では4月1日以降、集まった署名をもとに国会議員・行政への働きかけを行っていくとしている。
(J-CASTニュース編集部 大宮高史)