岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち
一瞬で楽観が消えたニューヨークの今

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大統領の言葉を信じていた国民も

   2020年2月26日、トランプ大統領はホワイトハウスで記者会見し、「米国民への感染リスクは、依然低い」とし、こう話した。

"We are ready for it. We are really prepared. As I said, we have the greatest people in the world. We are very ready for it."
「用意はできている。準備は本当に十分だ。前にも言ったように、我々には世界で最も優れた人たちがついている。準備は十分すぎるほど万端だ」

   トランプ氏のこの言葉を、信じていた国民も多かったはずだ。

   ニューヨーク州では3月1日、州内最初の感染がマンハッタンで確認された。その後1週間ごとに105人、729人、15,168人と急増。4週間後の29日には59,513人となった。死者は14日に2人だったのが、半月で1,000人に達する勢いだ。

   ニューヨーク市では最初の感染確認後、1週間ごとに14人、299人、10,764人と急増し、今や約30,000人となった(3月29日現在)。

   米国では3月中旬、欧州30か国近くを対象に入国制限が始まり、観光客は激減した。

   16日、マンハッタンにある大手デパート「メーシーズ」に行ってみると、客足はすっかり減っていた。殺菌スプレーを手に立っている店員のほうが、多そうだった。

   客を迎えるために一階にいた女性店員は、「みんな、過剰反応よ。ポジティブな人は、こうしてまだ買い物に来てくれるわ」と明るく振る舞っていた。

   が、その翌日の午後、メーシーズはその日をもって、子会社のブルーミングデールズを含む全米の750店舗を3月31日まで閉鎖すると発表した。その日はもう過ぎようとしている。

   そのあと、前を通ったバーガーチェーン「マクドナルド」では、正面に張り紙があり、「アンドリュー・クオモ・ニューヨーク州知事の命令により、4月12日(日)まで、すべてのレストランで収容人数を50%に減らすよう要請されています」と書かれている。店内ではテーブ1つおきに、「このテーブルは使えません」と紙が貼られていた。

   しかし、この紙はすぐに用がなくなった。その夜8時以降、ニューヨーク市の広域都市圏を含むニューヨーク、ニュージャージー、コネチカット州の3州は、レストランやバー、カフェを閉鎖。持ち帰りと宅配だけに限り、営業を認めていた。

   18日、マンハッタンのカフェに立ち寄ると、どのテーブルにも「NO SITTING PLEASE(座らないでください)」と紙が貼られ、店内のすべての商品2つを1つ分の値段で売っていた。

「日曜日から2週間閉店するの。落ち着いたらまた、店に戻ってこれると信じてるわ。そうでなきゃ、別の仕事を探さなきゃならないもの」

   そのとき、店員はそう言っていたが、今もいつ再開できるかわからない。

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