ロックダウン。このカタカナ言葉を、つい1か月前には、ほとんどの人が知らなかった。それが今や日本、特に発動の瀬戸際にある東京都民の関心を一手に集めている。
一方で、こんな声も――。
「うちの上司は『ロックアウト』いう。『ロックダウン』て教えても直らんからもう放置」
「ロックダウン、会社でいろんな間違い方されてて、ずーっとロックアップって話してる人もいた」
実際「ロックアウト」などは、SNSでの言及数や、検索数なども急上昇中だ。
大手新聞にも混同例
「Googleトレンド」によると、都市封鎖を意味する「ロックダウン」に日本で注目が集まり始めたのは、2020年3月15日ごろから。イタリアなどでのロックダウンが報じられだした時期だ。さらに23日、小池百合子都知事が記者会見で「都市の封鎖、いわゆるロックダウン」と言及する。これを機に注目度は急加速、3月前半との比較で検索数は、100倍以上の伸びを示し、現在に至る。
ところが、Googleトレンドを見ると、よく似たキーワードの「ロックアウト」も小池会見を機に、検索回数は10倍近くにまで上昇したことがわかる。ツイッターでの言及数も同様の傾向だ。Yahoo!リアルタイム検索での集計によると、直近で最も多い25日分の「ロックアウト」を含むツイート数は、実に1341件に上る。
実際ツイッターでは、「ロックアウト怖いなぁ」「早くにロックアウトしないと」と単純に間違えている人や、冒頭にも挙げたように「職場の人が『東京ロックアウト』って言ってるのを訂正したいvs訂正しても多分伝わらないっていう思いで揺れてる」「会社のおばちゃんはロックアウトって言ってました。家に居なきゃなのに締め出されるやん」など、身近に言い間違えてしまっている人がいる――といったつぶやきが、多数見られる。
もちろん、中には本来の「ロックアウト」について調べたり言及したりしている人もいただろうし、本家「ロックダウン」と比べれば10分の1以下の検索・言及数だが、「勘違い組」は相当数いるようだ。
メディアでも都市封鎖を「ロックアウト」と表現している記事がちょこちょこと。たとえば、毎日新聞(ウェブ版)の記事でも、
「自動車大国のドイツを中心に各国でロックアウト(都市封鎖)が広がっており、『域内の人の移動ができないことで車を作る労働力の不足も打撃になる』と分析する」(27日)
なんて例が。大手紙からしてこれなので、ネットニュースなどではもちろん言わずもがなだ(念のためJ-CASTニュースの記事を確認したが、今のところは間違えていなかった)。
はては「ノックダウン」「ロックオン」「シャットダウン」
ロックアウト以外にもSNSでは、やはりよく似た「ロックアップ」と言ってしまったり、はては「ノックダウン」「ロックオン」「シャットダウン」と間違えたりと、降ってわいてきた新語に人々は戸惑いを隠せない。
さて、「ロックダウン」について「ロングマン英英辞典」には、こんな解説がある(オンライン版 、原文は英語)。
「中にいる人々を危険から守るため、建物内のドアをすべて施錠する状況」
たとえば、銃撃事件が起きた後、学校が生徒を守るために「ロックダウン」状態に入る――といった使い方だ。対する「ロックアウト」だが、基本的な意味は「締め出す」。特にカタカナ言葉で「ロックアウト」といった場合は、労働争議の際、経営者側が、労働者が働くことができないように工場や店を封鎖し、締め出してしまうことを指す。
その違いは、英語圏にもピンと来づらい人がいるようだ。実際に米国には「ロックダウンVSロックアウト」というタイトルで、両者を比較しているウェブページがある。このページの説明に従うなら、
「建物内にいる人の視点から考えてください。『ロックダウン』の場合、建物内のあなたは今いる部屋や場所を離れることはできません。一方、建物内のあなたは、侵入してくる可能性のある相手を、建物から『ロックアウト』しているのです」
ちなみに「ロックアップ」は、「鍵をかける」「閉じ込める」。転じて「留置場」という意味に。日本でも「監獄レストラン」とをうたった「ザ・ロックアップ」という店舗がある。