高校訪問の2日後、「いつ日本から来たのか」とメール
その翌日3月4日から10日間、私は米南部フロリダ州のオーランドから車で50分ほどの町にいた。
5日、その町にいる私のもとに、2日前に昼食をともにした友人からメールが届いた。
「君がいつ日本から来たのかと、学校の責任者に聞かれたんだ」
ニューヨーク市はその日、日本からの帰国者に対し、14日間の自宅待機を要請したのだ。学校や職場へ行かずに自宅に留まり、1日2回の検温が求められる。自宅待機要請は、中国、イラン、イタリア、韓国、日本から帰国したニューヨーク市民が対象だった。
私は友人にすぐに入国した日にちを伝え、「コロナを心配しているのかしら」と尋ねた。
友人に誘われたとはいえ、生徒の命を預かる学校を訪ねたことを後悔した。
友人の返信メールには、「ネガティブな意味じゃなくて、こんな状況のなか、政府の介入や制限を避けられた君は、なんて賢いんだって、興味があったみたいだよ」と書かれていた。
しばらくは気が気でなく、生徒や学校関係者から感染者が出ないようにと祈る思いだった。
その9日後、私がフロリダ州から戻ると、ニューヨークの街はまったく様変わりしていた。(この項の後半は3月30日に公開予定です)
++ 岡田光世プロフィール
おかだ・みつよ 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。米中西部で暮らした経験もある。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計40万部。2019年5月9日刊行のシリーズ第9弾「ニューヨークの魔法は終わらない」で、シリーズが完結。著書はほかに「アメリカの家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。