石巻と気仙沼、「臨時災害放送局」の今 地域第一のコミュニティーFMとして【震災9年 東北と復興五輪(3)】

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「心の復興ができてこそ、真の復興」

   宮城県によると2020年2月29日現在、東日本大震災で亡くなった人は石巻市が県内最多の3552人、気仙沼市が1218人とこれに次ぐ。あまりにいたましい事実だ。

   気仙沼市でも震災後に臨時災害放送局「けせんぬまさいがいエフエム」が立ち上がった。当時は「給水車がいつ、どこに来る」「電気、ガス、水道の復旧状況」「病院や学校の再開情報」といった市の広報内容を放送していた。2017年6月に役割を終えて閉局すると、コミュニティーFM「ラヂオ気仙沼」に衣替え。災害復旧情報だけでなく、生活一般の情報番組の放送をスタートした。

   ラヂオ気仙沼代表取締役の昆野龍紀さん(62)に、番組作りで心がけている点を聞くと、「ハード面の復興は進んできたが、心の復興ができてこそ、真の復興なので、復興を後押しできる番組を制作している」とメールで回答した。合わせて、市が提供する情報を正確に、聞きやすく伝える番組構成をしているという。

   ラジオ石巻とラヂオ気仙沼、いずれも地域に密着し、リスナーととても近い距離にある。双方に、地元における「復興五輪」の受け止めを聞いた。

   ラジオ石巻の高須賀さんは、地元の人と接する中で感じるのは、「復興」と付けられた点への関心が薄いことだという。もちろん日本人選手の活躍を祈り、競技自体を楽しむだろうが、そこに「復興」を見いだす特別な感情はない。一方、ラヂオ気仙沼の昆野さんは、「私の周りは、楽しみにしているようです」と答えた。チケットを申し込んだ人も多かったという。

   思いは、さまざま。おりしも新型コロナウイルスの感染が世界中で深刻になるなか、東京五輪・パラリンピックの1年程度の延期が決まった。2021年開催なら、「震災から10年」と重ね合わせる報道が増えるかもしれない。それでも石巻や気仙沼の人々は冷静に「復興五輪」を見つめているだろう。

(J-CASTニュース 荻 仁)

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