インターネット上に違法にアップロードされた漫画など海賊版のダウンロード(複製)を規制する著作権法の改正案が閣議決定された。政府は1年前の通常国会で成立させる腹だったが、「ネット利用が萎縮しかねない」との懸念の声を受けて法案提出が見送られていた。
今回は批判を踏まえ、軽微なものは規制対象としないとした。ただ、海賊版との戦いはまだまだ続きそうだ。
「リーチサイト」は20年10月に施行
改正案は、権利者の許可無くネットに上げられたコンテンツのダウンロードの規制対象を、現行の音楽と映像だけでなく、漫画や写真、論文、コンピュータープログラムなどすべてに拡大する内容。著作権侵害物だと知りながらダウンロードしたり、スクリーンショット(スクショ)したりする行為が対象で、反復・継続して違反した場合は悪質なケースとして、刑事罰も設けた。著作権者の告訴が条件で、有罪になると2年以下の懲役か200万円以下の罰金、またはその両方が科される。
ただし、数十ページの漫画の数コマのように全体の分量から見て軽微なものや、一部に著作権侵害物が写り込んだスクショ、さらに「二次創作」やパロディーは対象にしないことにした。その他、著作物の経済的な価値やダウンロードの目的などから、著作権者の利益を不当に害しないと説明できる「特別な事情」がある場合は違法としないと、要件を絞った。改正案全体は2021年1月施行を予定。
改正案には、海賊版サイトにネット利用者を誘導する「リーチサイト」や「リーチアプリ」の規制も盛り込んだ。違法ダウンロードする場合、通例、これらサイトやアプリを経由して海賊版サイトにアクセスするからで、最高懲役5年・罰金500万円の刑事罰も導入する。この部分は一足早く、2020年10月施行する考えだ。
2017年秋ごろから「漫画村」(2018年4月閉鎖)が人気を集め、大きな社会問題となった。海賊版の映画や音楽、本など有償の著作物をネットで公開するのは現在でも著作権を侵害する違法行為だ。本来、作者や出版社が受けるべき利益を奪うもので、「漫画村」だけでも3000億円もの被害が生じたとの試算もある(コンテンツ海外流通促進機構。もっとも、この数字には異論も少なくない)。
ただ、現実には、違法サイトは海外のサーバーに置くのが一般的で、運営者が簡単には分からないため、摘発は難しい。
アップをやめさせるのが無理なら違法サイトにアクセスできなくする――ということで、当初の議論はサイトブロッキング(接続遮断)が中心だった。しかし、遮断するためには通信業者がネット利用者のアクセス先を監視しなければならず、憲法が保障する「通信の秘密」を侵害しかねないとして反発が強く、頓挫した。
遮断が無理なら、海賊版の利用に歯止めをかけることで、海賊版でもうけられないようにすることで海賊版を抑えようとするのが今回の改正だ。