農業分野への若手人材の獲得に向けて、ロボット技術や情報通信技術(ICT)を使った「スマート農業」に関する技術開発が進んでいる。
QRコードを使った樹木の管理システムを扱うライブリッツ(東京都品川区)は、「農業の労働生産性を引き上げて、若い人材が就職先として志望する産業に変える必要がある」と危機感を募らせている。
労働生産性を品種別に把握
日本の農業就業人口の平均年齢は67.0歳(2019年、農水省農業構造動態調査)とされており、若手人材の確保は喫緊の課題と言える。そうした環境下でライブリッツは、リンゴなど果樹の生産工程を樹木1本ごとに管理できるアプリ「Agrion果樹」の拡販を目指す。
同製品は樹木に取り付けたQRコードをスマホで読み取り、剪定や摘果といった作業名や作業の開始・終了時刻などを記録する。どの作業者が何の品種に何分間、どういった作業をしたのかを把握できる。取得したデータを総合すると作業の進捗率がリアルタイムで分かるほか、作業完了までに必要な日数や人数の推定にも使える。同社によると、1時間あたりの労働生産性を品種別に明らかにできるシステムは初めてだという。
システムに登録できる樹木の本数は500本~1500本。初期費用は5万円で、料金は3カ月1万5000円から(いずれも税別)。19年10月に本格提供され、既に青森、秋田、静岡の各県で合計5件の導入実績がある。5年後に100件以上のユーザー数を目指す。
アルゴリズムで野菜を大量生成
若手技術者に農業分野へ興味を持ってもらうための工夫も進む。プラスプラス(岩手県盛岡市)は、仮想空間の農園で農業用ロボットの挙動を開発できるシミュレーター「Smart3tene(スマート・ミテネ)」の開発を進めている。同シミュレーターは3DCGで表現した仮想空間に、アルゴリズムを使って樹木や果実、野菜を大量に生成した農園を再現する。仮想のロボットを使って摘果や収穫をシミュレーションすることで、ロボ開発の効率化やコスト削減につながる。農業分野での同様のシミュレーターは珍しいという。
同システムは、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)の若手技術者にもスマート農業を知ってもらうため、仮想空間内のロボットを擬人化して、作業状況を確認できる機能を搭載した。同社は「若い技術者にもスマート農業を認知してほしい。幼い頃からアニメーションが身近にある若手技術者にリーチできれば」と期待を込める。