2020年3月26日、筆者は、どうしても北京の中関村に行かなければならない用件があり、第四環状道路を使い、車で24キロメートルをほぼ1時間半かかった。渋滞でいらいらするより、クラクションはひとつもなく、北京は間違いなく平常に戻ったと感じ、うれしくさえ思った。
しかし、新型コロナウイルスによる都市封鎖の深刻な後遺症が出始めている。
身分証明書の「本籍」で判断
日本の小池百合子・東京都知事が3月23日以降、言及している「東京のロックダウン(封鎖)」の可能性は中国にも伝わっている。3月25日から26日にかけて北京の最高気温は22度から急に10度以下に下がったが、中国人としては小池知事の発言を聞いて、同じように寒く感じた。
新型コロナの感染が広がった武漢などの「封鎖」の実情について、多くの日本人読者はたぶん知らないと思う。1月23日から3月25日まで人は街を歩いては行けず、交通機関は使えない。新型コロナ肺炎の死者が出た建物では、全員外出厳禁、野菜などは玄関までしか届けられない。そうでない場合でも閉鎖された団地の中から出てはいけない。
中国では父親の出身地を本籍にして戸籍に記録する。本籍を武漢にする場合、数年間武漢に帰っていない人も、他の省や市ではホテルには泊まれないことがある。身分証明書を提示して武漢とみると、何度も体温を測られ、いままでの滞在歴を繰り返して聞かれる。
一応、3月25日から武漢市内での行き来は可能になり、また湖北省内ならバスなども使えるようになった。高速鉄道(新幹線)の駅は徹底的に消毒され、これから電車も使えるようになるだろうが、北京市民は湖北人、なかんずく武漢人を厳しく警戒している。
作家の方方さんは、3月23日の公開日記にこう書いている。
「北京が湖北人を拒否するニュースは、昨日から今日までずっと流されている。私はまったく信じられなく、今もやはり信じられなく思う。健康な湖北人と健康な湖北以外の出身者と、どんな違いがあるだろうか」
都市封鎖の後遺症はかなり長く、深く人々の心に残る。
広東の電気使用量は7割弱
予定されている4月8日の武漢封鎖の解除が実現すれば、中国では、その他の都市も含めて、さらに人の往来が盛んになる。すでに内陸部から沿海部に行くバスの運行は、どんどん始まっている。いつもと違うのは、他の省の封鎖を超える場合、手形のような大義名分が必要になるが、出稼ぎ労働者を載せたバスには一様に赤い横断幕を掲げて、内陸部から沿海部に行く労働者が乗っていることを堂々と明かしている。
澎湃ニュースの3月26日の報道によると、広東の電気使用量は昨年比ではまだ7割弱しか回復していない。春節で一時帰省した労働者がなかなか沿海部に戻れないので、企業はまだフル稼働できない。各地方はそれぞれ孤立の状態になり、人々は地方の外に出られないし、出てもほかの地方に受け入れてもらえない。
もちろん、1月23日からの武漢などを封鎖することによって、新型コロナウイルスはほぼ湖北の域を超えてその他の省に伝染していくことはなかった。
ただ、封鎖を解いたといっても、湖北省の車まで通過を許しているわけではない。
湖北省出身で、北京の行政機関、企業などで働いている30万人が、ほんとうに北京に戻れるのはどうしても4月8日以降になる。
外国からの第2波の感染爆発を懸念
世界で新型コロナの第一波の攻撃を受けた中国大陸だが、いまでは新規の患者のほとんどは海外からの帰国者、外国籍の方だ。
このため、海外からの帰国者や外国人によって第2波の感染爆発がやってくるのではないかと、北京などの国際都市は神経を尖らせている。すでに中国への飛行機は各社とも週に1便しか残さず、乗客率も75%以下と制限している。外交官や3月27日以降に発行した入国査証以外の人は、到着後に新型コロナ関連のチェックを受け、陰性でも自費で14日間、指定のホテルで滞在するようになっている。
(在北京ジャーナリスト 陳言)