新型コロナウイルスの感染拡大が、留まるところを知らない。一方で、国民のウイルスに対する「緩み」も見られるようになってきている。
相反する方向にかかる力によって引き裂かれそうになっている日本社会には、いつしか、「コロナ慣れ」「自粛疲れ」といった言葉が「流行」するように。このためネット上には、「コロナ慣れが1番危険」といった、緩み始めた空気を戒める声が続々と上がるようになっている。
そこで、J-CASTニュース編集部は「コロナ慣れの原因は何か?」「コロナ慣れしないようにするにはどうすればいいか?」「家族や同僚や部下がコロナ慣れしてきたらどうやって戒めれば良いか」について、経営コンサルタントで心理学博士の鈴木丈織氏に話を聞いた。
警戒心を維持するだけで、「ストレス」がかかる
まず、「コロナ慣れ」とでも言うべき空気が出てきてしまったことについて、鈴木氏は、
「新型の感染症という生きる上での大きな障害となる災いに対しては、人間は、当然ながら警戒心が働きますが、感染症に対してストレスを感じるのは当然として、警戒心を維持することにもストレスは発生します。このため、人間は長期間にわたって強度の警戒心を維持することは難しいのですが、これ自体は『ストレスから生命を保護する』ために必要なことであり、精神の自己防衛機能と言えるでしょう」
と、人間の心理としては自然なことであると指摘。しかし、同時に、
「3月の3連休中に人々が出歩いてしまったのは、この自己防衛機能が働いてしまったのはもちろん、『禁止行為を破ることによって得られる爽快感でストレスを解消しようとしてしまった人』が多数出現したことの表われでもあるでしょう。禁忌を破る快楽というものは回を重ねるごとに強化されてしまうので、『ストレスをただただ我慢する』という対処法では悪循環を招いてしまいます」
と、その厄介さを指摘した。
「うつされたらどうしよう?」ではなく「うつすんじゃないか?」
その上で鈴木氏は、ストレスが少ない警戒の方法について教えてくれた。
「今回のウイルスは無症状者が多数いることが特徴。ですから、『うつされたらどうしよう?』を考えるのをやめて、『うつすんじゃないか?』と考えてみてください。『うつされたらどうしよう?』と考えた場合に比べてストレスが少ないのが分かるはずです。このように、『自分が犠牲になるのではないか?』という発想をやめることで、ずいぶんとストレスは小さくなります。それはすなわち、警戒心を長期間維持することに役立ちます」
また、家族や同僚や部下が「コロナ慣れ」してきたらどうやって戒めれば良いかについては、
「これらの人々が『今回ぐらい』『1度だけなら』という兆候を見せ始めたら、『うつすんじゃないか?』の発想を、是非、その方々に『うつして』あげてください。『うつすんじゃないか?』の発想は、それ自体が責任感を喚起するので、強力な戒めとなるでしょう」
と、その対処法を示してくれた。
(J-CASTニュース編集部 坂下朋永)