「東京都医師会長から都民の方にお願い」――。新型コロナウイルスの感染拡大防止に向け、こんなタイトルで、尾崎治夫会長がフェイスブックに投稿した呼びかけが反響を呼んでいる。
そこでは、差し迫った危機を訴え、拡大防止への協力を求めている。尾崎会長に現在の状況について話を聞いた。
「ここ数日の東京都の感染者の増加は尋常ではありません」
「都内の繁華街やお花見の様子を見ますと、人混みから感染が広がって、家にいる高齢者にも移る流れになる恐れがあります。そのことを感じてもらおうと、今回、フェイスブックに出すことにしました」
都医師会の尾崎会長は2020年3月27日、J-CASTニュースの取材にこう明かした。
フェイスブックでは、会長室にあるというペットロボットに撮影してもらった自らの微笑み写真を26日にアップして、こう切り出した。
「...平和ですね。でもこうした平和が、あと2、3週間で崩壊するかもしれません」
尾崎会長は、この警告に続いて、こう現状を述べた。
「ここ数日の東京都の感染者の増加は尋常ではありません。心配です。新型コロナ感染は、多くの皆さんの想像を超えた広がりを示しています。医療提供体制の再構築も急務になっていて、そこは、我々の義務ですので、いま頑張っています」
そのうえで、「皆さんへのお願い」として、こう訴えた。
「いろいろな自粛活動で、経済がダメになるじゃないか。もう、家にいるのも飽きてしまった...。よくわかります。でも今の状態を放っておいて、例えばイタリアの様になったら、経済はもっともっとひどくになるのではないでしょうか。皆さんの生活ももっと大変な状態になるのでは...。感染者のかずが急増し始めた、今が踏ん張りどころなのです」
大学生から40歳代の人が無症状や軽い風邪だと思った状態でアクティブになることが大きな原因と言われているとして、こう締め括っている。
「アクティブシニア」原因説は本当か?
「若くて元気な方、もう飽きちゃった。どこでも行っちゃうぞ...。もう少し我慢して下さい。これから少なくとも3週間、生きていることだけでも幸せと思い、欧米みたいになったら大変だと思い、密集、密閉、密接のところには絶対行かない様、約束して下さい お願いします。私たちも、患者さんを救うために頑張ります」
尾崎会長のこのフェイスブック投稿は、3万件以上もシェアされるほど大きな反響を集め、ユーザーからの書き込みも相次いでいる。
「そうなんです。危機感がないのが何より問題」「今はウロウロせず、様子見しましょう!」「専門家の方々の正確で迅速な発進を強く歓迎します」「これは全国民に知らせたいです」といった声だ。
現在の都内の状況について、尾崎会長は、取材にこう話した。
「この3連休に浅草などに行きますと、確かに外国人の方は少なかったですが、日本の若い人でいっぱいでした。格闘技のK1でも、埼玉に6500人が集まったと聞きますし、かなり緩んできたと思いましたね。ここで引き締めないと、急激に増えていくでしょう」
尾崎会長によると、国の専門家会議が出した感染予測に比較的沿っており、4月の第1、2週には、1日で数百人に達する可能性も否定できないという。いわゆるオーバーシュートが起きる恐れがあるわけだ。
「居酒屋の従業員や客が、風邪で一般外来にかかり、PCR検査で陽性が出るケースが出ています。飲み屋やクラブがクラスター感染の元になっている、という情報も入ってきていますよ」
アクティブシニアと呼ばれる高齢者による自覚のない行動が感染を広げているのでは、との声もネットで上がっているが、尾崎会長は、こう言う。
1日に100人以上感染出れば、首都封鎖の可能性も
「うちのクリニックに来られている患者さんは、多くが高齢者ですが、話を聞くと、活動的な方は、お金持ちなど一部だけですね。感染を怖がって、老人会など人の集まりがなくなり、ほとんどの高齢者が家にこもっている状態です。実際は、若い人に比べて動いている人ははるかに少ないと思います」
もしオーバーシュートが起これば、医療崩壊が進む恐れが強いと、尾崎会長は明かす。
「感染のスピードが上がりますと、重症例も増えてきます。東京で、何千人もの感染者が出れば、隔離しないといけないので、ベッドが埋まってしまいます。脳梗塞やがんなどの患者さんも多いのに、対応できなくなります。軽症者は、自宅やホテルに移って療養してもらい、感染症専門病院のベッドを空けるなどの転換が必要でしょう。環境整備には1か月かかりますので、そのためにも、感染の増加が緩やかなカーブを描くようでないといけませんね」
首都封鎖を早めにやるべきとの声も多く出ていることについて、尾崎会長は、こう話した。
「1日に100人以上もの感染者が来週に出たら、恐らくやらざるをえないのでは。杞憂に終わればそれがいいことですが、最悪のケースを考えながら対処していく責任もあると思っています」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)