新型コロナウイルス問題に関連して、突如「和牛商品券」というワードがツイッターのトレンド入りした。
検討が進む経済対策案が連日報道されており、「現金10万円給付」や「商品券発行」などの文字が躍るなか、自民党の農林部会が和牛を始めとする国産牛肉の商品券発行を政府に提言しようと検討している、とのニュースが出たことを受けたネット上の反応だ。案の一つに過ぎないと冷静な受け止め方がある一方、怒ったりあきれたりする声も目立つ。テレビの情報番組でも取り上げられた。
「部分的な政策なのに」「業界にリップサービス」...
2020年3月25日夕、ツイッターのトレンド上位には「和牛商品券」のワードが入っていた。他に「和牛消費」や「和牛券」の姿も。
25日に日本農業新聞(ウェブ版、以下同)が「【新型コロナ】 和牛消費へ商品券 経済対策自民が検討」の見出しで伝えたニュースが注目を集めた結果とみられる。25日夜には共同通信が「自民部会、国産牛の商品券発行を提言へ」と、26日朝には時事通信が「牛肉振興へ『お肉券』構想 経済対策、自民で浮上―新型コロナ」と伝えた。時事通信記事では、
「日本全体に逆風が吹き付ける中、(国産)牛肉に特化した振興策には異論も予想され、実現するかは不透明だ」
「牛肉に限定した商品券発行については党内でも賛否が分かれている模様だ」
と伝えている。
ツイッターで広がった「和牛商品券」という単語は、上記3記事には直接的には登場しない。見出しに「和牛消費へ商品券」と使った農業新聞記事も本文では「和牛など」となっており、検討対象は「和牛を始めとする国産牛肉」(共同通信)なのだが、ツイッターで次々と紹介される中で「和牛商品券」というワードに省略され、注目を集めていったようだ(和牛と国産牛の違いは後述)。
ツイッターには、
「家賃払えなきゃ和牛どころじゃないんだけど」
「国民は収入減で生活が苦しいと言っているのが分からないのか 毎晩高級料理を食べている人間はこんな馬鹿げたことしか思いつかない」
といった反発も多く寄せられた。国民民主党の原口一博・国対委員長は26日のツイッターで
「税や公共料金の支払い免除、休業補償予算化さえできない無能な内閣は、総退陣せよ。今日、食べるものさえ無いのに和牛商品券もらってどこで食べろと?(略)」
と疑問を呈した。
一方で、
「『農業分野の経済対策』と、部分的な政策なのに(略)」
「農水族が(略)業界にリップサービスしたのを業界紙が取り上げたという話だなあ」
といった冷静な受け止め方をする向きもあった。
実際、政府は経済対策について、収入が大きく落ち込んだ世帯・事業者への支援を念頭に置いた緊急経済対策と、感染終息後の景気刺激策とをそれぞれ実施することも含めて検討を進めている。「和牛などの国産牛商品券」構想は、後者の一環として自民党内で検討されている模様だが、「終息」時期が見通せないなか、「緊急策か終息後の景気刺激策か」の議論自体が混乱している部分も見受けられる。
「だったら魚が買える商品券も」
ただ、いずれにせよ経済的な打撃を受けているのは和牛・国産牛業界だけではない、として、ツイッターには、
「『だったら魚が買える商品券も』(略)『家賃が払える商品券が欲しい』...となっていく」
と指摘し、現金給付が望ましいとする内容のものもあった。
「和牛商品券」の話題は、26日放送のテレビ情報番組でも取り上げられた。「ひるおび!」(TBS系)に出演したコメンテーターの作家、室井佑月さんは、特定業界の救済案であることから、
「和牛商品券とか言い出して、ここまで来てまだ利権の匂いがプンプンする。こういうの本当にやめてもらいたいと思います」
と反対姿勢を示した。他の出演者らも「まず生活(に直結する)支援を」といった趣旨の発言を続けていた。
なお、先述の「違い」については、「和牛」は日本在来種をもとに改良された特定4品種(及び「和牛間交雑種」)で、さらに日本で生まれ日本で育てられた牛のことをいう。「国産牛(肉)」は、育てられた期間が最も長い国が日本(期間が同じ場合は最後の飼養地が日本)の牛(の肉)のことで、品種も様々だ。