高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
なぜ新型コロナで「予算修正」しないのか 経済政策「3段階」の背景

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   日本のコロナ対策の予算面をみると、これまで「3段階」になっている。第一段階は2019年度予算の予備費、第二段階は4月からの2020年度予算、第三段階は2020年度補正予算。通常であれば、この順番はそのとおりだ。

   3月いっぱいまでは、2019年度予備費を使う。毎年度予算では資金使途を定めない予備費があり、2019年度は災害時の緊急な財源手当てとして5000億円計上していた。これを使い、2月13日、3月10日にそれぞれ決定した新型コロナの緊急対応策を行った。

   これで賄えなければ、本来は2019年度補正予算を行うべきだ。しかし、これはそれほど簡単なことでない。

財務省が思い描く「通常のペース」

   2019年度は3月末までの予算であるが、3月の残り少ないときにわざわざ補正予算を組むのかというわけだ。しかも、3月は2020年度予算を参議院で審議中だ。2020年度予算は、2月までに衆議院を通す。そうなると、予算の衆院優越により、1ヶ月後には参議院の審議にかかわらず予算が成立する。このため、2月までに衆院通過を終わらせ、後は自然成立を待つだけだ。このため、3月の参院の予算審議は消化試合のようになる。政府与党としては、参院は寝たままでいてほしいので、補正予算騒ぎはしたくない。

   2019年度補正予算ではなく、2020年度予算の修正はどうだろうか。これは、コロナ対策を4月から大々的に行うアピールもでき、国民にも4月からの安心を与えることができる、まっとうな話だ。しかし、財務省はかたくなに拒否する。与党にも、予算案の修正があれば、政権が倒れるくらいの一大事と説明し、それが政界の「常識」にもなっている。たしかに、戦後の予算修正はごくわずかな例外的な例しかない。

   こうしたことが、冒頭に書いた「3段階」の背景になっている。この手順に従えば、3月末の2020年度予算成立までは、第一段階の2019年度予備費、4月になったら、第二段階の成立した2020年度本予算を使う。それでも足らなければ、4月以降に2020年度補正予算を作り、それを使う。要するに、財務省が思い描いている「通常のペース」で予算を作るので、そのとおりに政策を考えるべきとなる。

   一方、コロナはそんな財務省の思い描いたスケジュールなどまったく考えずに、ものすごいスピードで経済を落ち込ませている。

予算修正しないという「都市伝説」

   実は、筆者は3月初めから、2020年度予算の修正を各方面に提案していた。これが、最短コースでコロナ経済対策を打ち出せるからだ。

   財務省が予算修正を頑なに否定するのももちろん知っている。ただし、戦前は予算修正はしばしば行われたことがある。戦後、予算修正をしないというのは、単に財務省が作った「都市伝説」だ。つまり、予算は財務省が作り、それを修正する議会はケシカランという財務省の意図を表したものにすぎない。アメリカでは、そもそも予算は政府が議会に提案し議会が承認するものではなく、議会が自らつくるものだ。このため、予算修正はそもそも議会の予算作りの基本中の基本だ。

   そんな財務省のくだらない面子のために、コロナ対策のスピード感が著しく損なわれているのは、残念だ。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長 1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「韓国、ウソの代償」(扶桑社)、「ファクトに基づき、普遍を見出す 世界の正しい捉え方」(KADOKAWA)など。


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