東京都の小池百合子知事が2020年3月25日夜に開いた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する記者会見で、同席した国立国際医療研究センターの大曲貴夫(のりお)国際感染症センター長が現場医師として明かした危機意識に、緊張が走った。
大曲氏は「8割の人(感染者)は本当に軽い」とした上で、「ただ残り2割の方は確実に入院が必要で、全体の5%の方は集中治療室に入らないと助けられない」などと説明。3月下旬に入り自粛からの解禁ムードも漂っているが、会見発言を受けインターネット上では「コロナ慣れしてる自分を恥じます」といった声もあがった。
「悪くなる時のスピードはものすごく早い」
会見では、「海外には自ら治療を受けている動画を撮り、若い人でもかかってしまうことを映像で伝える人も出ている。実際に患者を診ている医師として、新型コロナウイルスのこれまでと違う怖さがあれば具体的にお願いします」との質問が出た。
国際感染症センターで感染症内科医長も併任する大曲氏は、海外で一部の患者が公開している動画についてこう答えた。
「ああいう映像を使って自分の有りようを示してくださる方を、僕はものすごく尊敬します。あれによって伝わるメッセージは非常に強い。日本でもああいう方々がひょっとしたら出てくるかもしれません。それは何と言うんでしょう、お願いしたいというのは良くないですが、コロナという病気がどういうものかを伝えるには非常に重要だと思います」
そのうえで、現場の医師として実感する新型コロナウイルスの恐怖を次のように語っている。
「この病気の怖さというのは、WHO(世界保健機関)が出している数字にもありますが、8割の人は本当に軽いんです。歩けて、動けて、仕事にもおそらく行けてしまう。ただ残り2割の方は確実に入院が必要で、全体の5%の方は集中治療室に入らないと助けられない。
僕が現場で患者さんを診ていてよく分かるのは、悪くなる時のスピードはものすごく早い。1日以内、数時間で、それまで話せていたのにどんどん酸素が足りなくなって、酸素をあげても駄目になって、人工呼吸器をつけないと助けられない状況になる。それでも間に合わなくて、人工心肺をつけないと間に合わない、ということが目の前で一気に起きる。ものすごく怖いです。かかった方は、特に持病がある方にはそういうことが起こる」
そして、「だからやはり、かかっちゃいけないと思う。僕はすごく強く感じます。それが僕の正直なところです」と率直な思いを伝えている。
小池知事「都民の皆様のご協力が何よりも重要」
大規模イベントの自粛や外出を控える動きが続く中、東京では3連休中の22日、桜が満開。都は宴会自粛を要請してきたが、桜の名所は大勢の花見客でにぎわった。こうした動きに象徴されるように、新型コロナウイルスに対する不安感が薄らぎはじめ、「コロナ慣れ」という言葉も広がっている。
ただ感染者は増加。東京ではPCR検査の陽性者数が23日に16人、24日に17人、そして25日には41人、新たに確認された。3連休明けの3日間は、都の1日あたりの陽性者数を連続して更新している(それ以前の最多は17日の12人)。25日の会見時点で、東京の陽性者数は累計212人、うち死者は5人、退院者は31人となっている。
このような現状の中で発信された大曲氏のメッセージに、ツイッター上では、
「もし自分が感染したら、自分は8割に入る?2割に入る? そんなの罹って見ないとわからない現実感を改めて感じて怖くなりました。コロナ慣れしてる自分を恥じます」
「やっぱり現場に出ている専門家さんは、すごい説得力 かかったら絶対ダメなコロナウィルス」
「専門家のこの見解だけは心に伝わってきた」
との声が。再び気を引き締めた人もいるようだ。
小池知事は25日の会見で、都内の感染増加を受けて「感染者の爆発的な増加、いわゆる『オーバーシュート』を防ぐためには、都民の皆様のご協力が何よりも重要です。1人1人危機意識を持って行動していただけますよう、改めてお願い申し上げます」との所感を示し、具体的には「NO!!3密」として、(1)換気の悪い密閉空間(2)多くの人の密集する場所(3)近距離での密接した会話――という3つの「密」を避ける行動を要請。屋外・屋内のイベントなどへの参加も控えるよう呼びかけた。
「職種による」としつつ平日の仕事はできるだけ自宅ですること、夜間は外出を控えること、28日からの週末は不要不急の外出を控えることなども求めた。また、現状について改めて「一言で表しますと、『感染爆発の重大局面』と捉えていただきたい」と危機意識を訴えた。
(J-CASTニュース編集部 青木正典)