素材を工夫し「普段は丈夫、でも、外したいときは外しやすい」
nafeeeの最大の売りは、既存のジェルネイルでは30~40分程度かかっていた除去の工程を、特殊光の照射によって数分に短縮する点だ。
ネイルランプに手を入れて照射すると、ベースコートに気泡が生じて5分で剥離可能になる
この「密着性と剥離性の両立」(梅本さん)の実現のため、チームはこれまでの仕事で培った、本来ネイルアートとは異なる分野の知見も総動員して素材を検討した。これは総合電機メーカーであるパナソニックグループならではの強みと言える部分かもしれない。ちなみに、ベースコート剤に採用された特殊光を照射すると気泡が発生してはがれやすくなる素材は、元々、航空機の燃料等の分野で活用されてきたものという。
梅本さん「ネイルを剥離する為のトリガーとして、最初は電気を使うことも考えたのですが、微電流とはいえ、人体、それも爪の上に均等に電気を流すのはハードルが高く、断念しました。しかし、この商品は素材開発がカギになるので、その選択を担当するのはやりがいがありましたね」
ベースコート剤の工夫だけではない。nafeeeはアプリでジェルネイルのデータを共有、ネイルデザインの履歴を自動的にデータ化する機能の搭載を予定している。この検討には主にソフトウェア技術を通じてIoT家電の開発に従事してきた川口さんの経験が活かされた。「自分の専門分野はnafeeeでは脇役かもしれませんが、デバイスをシームレスに使う発想が活かせたのかなと思います」と川口さんは語る。
4人のうち3人が男性というチーム構成だが、男性陣も自らnafeeeのジェルネイルを付けて「付け心地」を試し、よりよい素材を目指してきた。
ジェルネイルを付けてみて「2週間、全くはがれませんでした」と川口さん
川口さん「女性がネイルをつけるのは手を美しく保ち、気分よくいられるためだと聞いていたんですが、自分にはまだその感覚がなくて。日常生活でもつけ続けるのは緊張もありましたけど、意外と女性から話しかけられたりして楽しいこともありました(笑)」
リサーチを続けていくうちに、チームは女性がネイルにかける情熱を知った。
甘利さん「ネイルユーザーの皆様が、時間や、手間や、本当に色々な事に投資しながら、ネイルアートを楽しんでいることを知りました。それだけの投資をしてでもやりたい、という強烈な魅力があるんです。日常生活の中で、手が他の人や自分の視界に入らない日はほぼありませんから、『ネイルアートできれいになった爪先を見ていると"気持ちがアガる"』と多くの方がおっしゃるのも納得です」
記者も同僚の女性社員から、指をきれいに見せるだけでなく手を清潔かつ健康に保ち、年齢を重ねても元気でいられるとネイルの魅力を熱弁されたことがある。爪をいためずに、より多様にネイルを楽しめる可能性をnafeeeは持っている。