タイの国技とされるムエタイの競技場で新型コロナウイルスの集団感染が起こった。タイの地元紙「バンコク・ポスト」によると、ルンピニ・ボクシング・スタジアムで行われたムエタイの試合後に選手やトレーナー、観客による集団感染が起きた。
その後も感染は広がりをみせ、23日までに感染者は100人を超えたという。タイ国内では24日午前10時の時点で827人の感染が確認されている。
「熱気が渦を巻いて迫ってくるという感じです」
ルンピニ・ボクシング・スタジアムは、ラジャダムナン・スタジアムと並んでムエタイの「聖地」とされる。スタジアムは最大9500人が収容可能で、週末の興行は国内外から多くの観客が詰めかけスタジアムを埋め尽くす。集団感染が起こったのは3月上旬の週末の興行とみられ、スタジアムに数千人単位の観客が詰めかけたようだ。
ムエタイでは会場内で賭けが行われ、観客の熱狂度は他のスポーツとは一線を画す。なかには紙幣を握りしめながら声援を飛ばす観客もおり、会場は熱気に包まれ怒号が飛び交うこともある。タイでボクシングの興行を手掛けた経験を持ち、ルンピニ・ボクシング・スタジアムでムエタイを何度も観戦したという協栄ジムの金平桂一郎会長(54)は、屋内の大規模興行の危険性について次のように言及した。
「ルンピニはリングサイドに国内の芸能人や政治家、海外のお客様用のVIP席が設けられ、賭けを行う一般の観客はスタンド席で観戦します。私が観戦した当時は会場の換気が悪く、とても蒸し暑かったです。賭けをする、しないに関わらず観客の声援はすさまじく、熱気が渦を巻いて迫ってくるという感じです。しかも屋内で観客は密集しています。残念ながらウイルスに感染する条件が多くあったと思います」