「仲間がトヨタの結果の影響を...」
だが、経営側はベアの実施自体に難色を示し、交渉は回答日当日の朝までもつれた。結局、労組側の要求は通らず、西野勝義執行委員長は「(交渉の終盤は)ずっと平行線だった。ギリギリの最後で受け入れた」と明かした。
さらに、経営側は2018年以降、ベアの具体的な金額を非公表としてきたが、今回はベアゼロという形で3年ぶりに開示した。これまでベア額を非公表としてきたのは、他の企業に与える影響に配慮する意図があったが、今回、トヨタのベアゼロが明らかになったことで、他の企業の交渉にも影響する可能性がありそうだ。西野委員長は3月11日の会見で、「中小企業などの仲間がトヨタの結果の影響を受けてしまうのではないかと考えると、正直耐えられない気持ちだ」と苦渋の表情を浮かべた。
今回のトヨタの労使交渉は、脱一律色が強いものになった。豊田社長はこれまでも賃金を含む人事制度について「聖域は設けない」と述べており、その流れは加速する。トヨタは4月以降、定期昇給について人事評価に基づく査定幅の拡大を検討する方針で、成果重視の傾向が一段と強まることになりそうだ。