カナダのオリンピック委員会は2020年3月22日(日本時間23日)、今夏の東京五輪が予定通りに開催する場合、選手団を派遣しない意向を明らかにした。同委員会は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、大会の1年延期を求めている。
オーストラリアのオリンピック委員会も大会の延期を求めており、世界中の競技団体からこれに同調する声が広がっていることから東京五輪の延期がいよいよ現実味を帯びてきた。
「選手たちは2021年の開催に備えるべきだ」
カナダのオリンピック委員会は、今夏に予定している東京五輪に向けた選手団の派遣について「選手と世界にとって健康や安全以上に重要なことはない」との理由で派遣を断念したと声明を発表。一方のオーストラリアのオリンピック委員会は「選手たちは2021年の開催に備えるべきだ」との声明を発表し、今年の7月に大会が開催されないことは明らかだと指摘している。
国際オリンピック委員会(IOC)は東京五輪の中止については否定的で、カナダ、オーストラリアのオリンピック委員会も大会の中止ではなく、延期を求めている。米国、欧州の選手、関係者から通常開催を疑問視する声が上がるなか、IOCは大会の延期を視野に入れて準備を進めることを明言し、4週間以内に何らかの結論を出す方向性を打ち出した。
大会が延期となった場合、試合会場の確保や代表選考問題などを考慮すれば、最長でも2年が限度とみられる。年内の開催も考えられるが、新型コロナウイルスの感染拡大に収束の気配がみられない現在、リスクは大きすぎる。カナダ、オーストラリアのオリンピック委員会が主張するように、大会を1年後に設定した場合はどうだろうか。
2021年なら競泳・陸上の世界選手権と「かぶる」
2020年東京五輪は7月24日の金曜日に開幕し、8月9日の日曜日に閉幕を予定している。1年後にスライドした場合、7月下旬の金曜日開幕でスケジュールを組めば、7月23日開幕の8月8日閉幕となる。この五輪スケジュールに対して、世界のスポーツカレンダーはどのようになっているのか。
2021年の7月16日から福岡県で競泳の世界選手権が予定され、大会は8月1日まで続く。8月6日から15日までは、米オレゴン州で陸上の世界選手権が開催される。米国内で人気のある競泳、陸上の世界選手権が五輪スケジュールとかぶることになり、大会を1カ月前倒しても、サッカーの欧州選手権、南米選手権(ともに6月11日~7月11日)とかぶってしまう。
米放送大手NBCがIOCに巨額の放映権料を支払っているため、米国の人気スポーツであるアメリカンフットボール、バスケットボール、野球のメジャーリーグのプレーオフと重なる秋の開催は現実的ではない。一方で、競泳、陸上の世界選手権のスケジュールを動かすこともまた困難だろう。
代表選考、スタッフや会場の確保が大きな課題
2022年のスポーツカレンダーをみてみると、2月に北京で冬季五輪が開催される。夏場の7月27日からは第22回コモンウェルスゲームズ(英連邦競技大会)がバーミンガムで開催される。日本にはあまり馴染みのない大会だが、4年に一度開催される歴史ある大会だ。9月には中国でアジア競技大会が開催される予定で、11月にはサッカーの世界的なイベントであるW杯カタール大会が開幕する。
五輪と比べて規模が小さいとはいえ、今からコモンウェルスゲームズのスケジュールを組み直すのは簡単ではないだろう。英国のオリンピック委員会がすんなり受け入れるかも疑問だ。世界のスポーツカレンダーだけを考慮すれば、2022年の6月あたりに大会を前倒しするのが現実的か。いずれにせよ大会を延期するとなれば、代表選考の再考、大会スタッフ、会場の確保や人件費の捻出など解決すべき問題は多い。