航空関係のニュースでしばしば登場する「フライトレーダー24」は、位置情報を含むデータを受信して、世界中の航空機の位置を表示するウェブサイトだ。スマホのアプリで利用する人も多く、航空機を表す黄色いアイコンはすっかりおなじみだが、最近になってブルーのアイコンがお目見えした。
衛星を利用してデータを送信した航空機がブルーで表示される。これまではデータを地上のアンテナから受信しており、洋上を飛ぶ航空機はカバーしにくい傾向があったが、これまでの弱点が改善されることになりそうだ。
世界中のボランティアが受信したADS-Bを集める
「フライトレーダー24」は、航空機が出す「ADS-B」と呼ばれる空中衝突を回避するための信号を活用する。ADS-Bには航空機の位置情報、高度、管制官と交信する際に使う呼び出し符号(コールサイン)などが含まる。世界中のボランティアが地上から受信したデータをフライトレーダーのサーバーに送り、それを集計して世界中の航空機の情報を表示する仕組みだ。
自分のアンテナで受信したデータをフライトレーダーに送信した人には、フライトの詳細データや、過去のフライトを検索できたりする有料プランが無料で提供されるなどの特典もあり、日々2万か所以上の受信機からデータが集まっている。フライトレーダーの推計によると、全世界の旅客機の約70%がADS-Bのデータを発信しており、そのうち巡航高度(30000フィート=約9100メートル)で運航する航空機について、米国と欧州ではフライトレーダーが100%をカバーすると説明している。
カナダ、メキシコ、カリブ諸国、ベネズエラ、コロンビア、エクアドル、ペルー、ブラジル、南アフリカ、ロシア、中東、パキスタン、インド、中国、台湾、日本、タイ、マレーシア、インドネシア、オーストラリア、ニュージーランドについても大部分をカバーし、それ以外の地域についてはまちまちだという。
航空機のADS-Bを衛星で受信して地上に送る
1つの受信機がカバーできる範囲は半径250~450キロ程度。そのため、海の上や、人が入りにくい土地の上空を飛ぶ航空機はカバーしにくい傾向がある。例えば北朝鮮と中国を結ぶ路線では、北朝鮮上空の様子はフライトレーダーでは分からない。
フライトレーダーに表示される航空機のアイコンは黄色だったが、最近になってブルーのアイコンが加わった。2020年3月12日付のフライトレーダーのブログによると、衛星経由でADS-Bを受信した航空機がそれだ。16年には実験的に衛星経由のADS-B受信が行われたが、20年になって本格導入したという。
米スパイア・グローバル社が打ち上げた超小型衛星で航空機が出すADS-Bデータを受信し、それを地上に送る仕組みだ。ただ、衛星経由のデータは最大で10分の遅延があるといい、地上からADS-Bが受信できない場合にのみ、衛星経由のデータを利用する。「ネットワークにデータを送る衛星の数が増えれば、データの量も増えて遅延は少なくなるだろう」としている。
3月17日時点では、太平洋や大西洋上空で多くの「ブルー」アイコンの航空機が確認できる。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)