2020年3月18日、香川県議会で「ネット・ゲーム依存症対策条例」が賛成多数で成立した。
この条例は「子どものゲームのプレイ時間を平日は60分、休日は90分までに制限する」「スマートフォンの使用時間を中学生以下は午後9時、高校生は午後10時までに制限する」よう保護者に求めるなど、本来は家庭及び個人が責任を持つ領域である、「時間の使い方」に行政が踏み込んだ異例のものだ。
反対票投じた県議の存在は「救い」
そもそもネット・ゲーム依存症自体が医学的根拠に乏しいとの意見もあり、ここにいち早く踏み込んだ理由は定かではないが、条例の成立過程には大きく疑問が残る。
本条例に関連して、1月23日から2月6日の15日間にパブリックコメントが実施されたが、一般的にパブリックコメントは約1か月間実施されるにも関わらず、なぜ半分の期間になったのか、明確な説明は行われていない。
またパブリックコメントでは香川県内から寄せられた2615件の内、賛成が2269件となっているが、通常1か月のパブリックコメントを実施しても寄せられる意見は数件程度と言われており、わずか2週間でこれだけの数が集まったこと自体、極めて大きな違和感があると指摘される。また賛成派の観音寺市議会議員の合田隆胤氏が、特に形式が決まっていないはずのパブリックコメントに対し、賛成/反対に丸が付けられるようになっている用紙を作成、支援者などに記入を呼び掛けていたことなども、違和感に拍車をかけている。
条例に罰則はないが、往々にして規制というものは「小さく生まれ、大きく育つ」傾向にある。堤防に穿たれた蟻の一穴のごとく、規制を押し広げる動きが生まれる可能性は否定できない。
ただ、今回救いとなったのが、日本共産党の秋山時貞県議が中心となり、条約の成立に異議を唱えてくれたことだ。最終的には自民党の一部も反対票を投じた(2つある自民会派のうち、自民党議員会が反対に回った)ことも意味を持つ。単純にゲームを規制しようとする動きには、猛烈な逆風が吹くことを知らしめることが出来たのは大きな収穫だ。
現在、経済産業省はeスポーツ市場の成長を目標として掲げており、2025年の市場規模目標を600から700億円としている。隣の徳島県は県知事が自らプロゲーマーと対戦するなど、ゲームを利用した産業振興に取り組んでいる。行政の役割とは若者の可能性を潰すことではなく、背中を押すことではないだろうか。生まれた場所がわずかに違うだけで可能性を左右されることがあってはならないと、筆者は考える。
(eスポーツライター 早川清一朗)