首相会見で言及あったのは「大きかった」
―― 3月14日の安倍晋三首相の記者会見では、消費減税に関する質問が出て、明確な返答はありませんでしたが、「何をすべきかということについては、こうした提言も踏まえながら、世界経済の動向を注意深く見極めて、さまざまな可能性を想定しながら、今後、必要かつ十分な経済財政政策を間髪を入れずに講じていきたい」と、提言にも言及しながら答弁しました。どう受け止めましたか。
安藤: この提言に触れられたのは大きかったと思います。前向きかどうかは分かりませんが、検討の俎上にはのっているんだろうなと感じます。「これで実現できる」と楽観しているわけではありません。引き続き色々なところに働きかけていきたいです。
―― ご自身は麻生派に所属していますが、麻生太郎財務相は、3月10日の参議院財政金融委員会で、景気対策としての減税に「反対するつもりはない」と述べる一方で、3月13日の記者会見では、「一律減税しても(景気)刺激にはならない」と、減税には否定的な発言をしています。大臣と会話をする機会はありましたか?
安藤: この提言を出した後はありませんが、出す前に派閥の会合でお会いした時に、「消費税減税をぜひ考えてください」という話はしました。
―― 反応はどんな感じでしたか?
安藤: ニヤニヤしていました(笑)。
―― それは真意が読み取りにくいですね...(笑)。麻生氏は3月13日の会見で、キャッシュレス決済のポイント還元制度が最も国民から利用されたことを指摘しながら「効果があるものにしないと意味がない」とも述べました。
安藤: キャッシュレス推進とポイント還元は、天下の愚策ですね。麻生大臣の発言は、「消費税減税しても消費に回るとは限らない」という趣旨ですが、まず前段として、消費税増税したら(GDPが年率換算で)マイナス7.1になったわけです。消費増税自体が経済の土台を壊している。まず、そこを立て直さなきゃダメです。確かにポイント還元は使われたかもしれませんが、消費増税のダメージの方がよっぽど大きかった。マイナス7.1になったということは、ポイント還元をやったところで増税のダメージは抑えられなかったということです。
―― 規模の問題ですね。
安藤: 規模の問題に加えて、ポイント還元のキャッシュレスの推進は中小企業にとっては大きなダメージです。なぜかというと、いままでの資金繰りは現金取引なので、売った時に現金が入る。ただでさえ資金繰りに苦しんでいて「お金を貸してください」ってやっているときに、さらに資金繰りが悪化するわけですよ。「何してんですか!」って話ですよ。それに、キャッシュレスを入れたら決済手数料も取られて利益も減る。事業者にとって、何にもいいことはありません。
―― 東京五輪、パラリンピックの延期や中止の可能性に言及する声が出ています。仮にそうなれば、五輪で見込んでいた需要も吹き飛ぶことになります。さらに経済対策の規模を大きくする可能性については、いかがお考えですか。
安藤: プラス20兆円で、50兆円になるかもしれません。それぐらいの規模感が必要なのではないでしょうか。
安藤裕さん プロフィール
あんどう・ひろし 衆院議員、自民党政調総務部会 部会長代理。1965年神奈川県生まれ。慶應義塾高校、慶應義塾大学卒。相模鉄道株式会社でサラリーマンとして働きながら税理士資格を取得し、1998年に安藤裕税理士事務所を開設。2010年に自民党衆院京都6区候補者公募で選任され、12年12月に初当選。現在3期目。前内閣府政務官兼復興政務官。