東京五輪の聖火を日本に輸送する特別機が2020年3月18日、羽田空港からギリシャ・アテネに向けて出発した。東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長、橋本聖子五輪相らが現地に向かう予定だったが、新型コロナウイルスの影響でギリシャ政府が入国者に対して14日間の隔離措置に踏み切ったため、3月18日に現地入りしないことを決めた。
この影響で出発セレモニーも中止になり、組織委員会関係者を一人も乗せずに出発する異例の事態となった。
JAL機にANA・JALのロゴがペイント
当初の計画では、森氏や橋本氏に加えて、柔道の男子60キロ級で五輪3連覇を果たした野村忠宏さん(45)とレスリング女子55キロ級で五輪3連覇の吉田沙保里さん(34)も「聖火リレーアンバサダー」としてアテネに向かう予定だったが、3月17日夜になって派遣中止が決まった。組織委の広報担当者によると、特別機に搭乗したのは運航乗務員(パイロット)4人と、航空会社の関係者14人の計18人。組織委からは誰も搭乗しなかった。
聖火の輸送は日本航空(JAL)と全日空(ANA)が共同で担当。JALが所有するボーイング787-8型機(登録番号JA837J)が特別機に衣替えされた。「TOKYO 2020 OLYMPIC TORCH RELAY」の文字と、聖火リレーの標語「Hope Lights Our Way」が描かれ、機体前方にはJAL・ANA両社のロゴマークがペイントされた。組織委によると、どちらの社のパイロットが操縦を担当したかは公表されない。
当初は羽田空港の第3ターミナル(3月13日までは「国際線ターミナル」)で野村さん、吉田さんらによる挨拶やフォトセッション(写真撮影)などが予定されていたが、3月17日にはフォトセッションを取りやめ、野村さんと吉田さんの囲み取材だけを行うことが決まった。同日夜には2人の派遣取りやめが決まり、セレモニー自体も中止に。その結果、18日の出発では、報道陣はターミナルの建物には入らず、ランプ(ボーディングブリッジ下の区域)から特別機を撮影するのみになった。この変更が報道陣にメールで発表されたのは3月18日未明の2時9分のことで、直前の変更に組織委員会側も苦心したことがうかがえる。
すでに現地にいる組織委担当者が聖火を持ち帰る
羽田空港の出発便の掲示板には特別機の便名には「GO2020」が表示されたが、運航システム上の便名は「JL1964」。航空機の位置情報などを表示するウェブサイト「フライトレーダー24」でも「JL1964」が表示された。前回の東京五輪が開かれた1964年にJALが聖火輸送を担ったことを念頭に置いているとみられる。
特別機は13時過ぎに羽田空港のC滑走路を離陸し、アテネに向かった。3月19日にアテネで聖火の引き継ぎを受け、すでに現地に派遣されている組織委の職員が持ち帰る。3月20日に航空自衛隊松島基地(宮城県東松島市)に到着予定で、直後に行われる聖火到着式では、航空自衛隊の飛行チーム「ブルーインパルス」がカラースモークを使って上空に五輪マークを描くパフォーマンスすることになっている。聖火リレーは、現時点では3月26日に福島県からスタートする予定だ。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)