岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち
コロナでニューヨークもゴーストタウン

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ニューヨークの「外出禁止令」も検討

   ニューヨーク市では今、住民に外出禁止令を出すかどうか、検討されている。

   同市の川向こうのニュージャージー州ホーボーケンでは、住民の夜間外出が禁止されているほか、西部カリフォルニア州サンフランシスコなどでも、不要不急の場合を除き、外出が禁止されている。

   3月16日、新型コロナウイルス拡大の懸念から、ニューヨーク株式市場のダウ平均の下げ幅は一時、2700ドルを超え、1987年10月のblack Monday(暗黒の月曜日)以来の大きな下げ幅となった。ニューヨーク証券取引所は、取引を一時停止した。取引停止は先週に続いて3度目だ。

   ゴーストタウンと化したニューヨーク。16日、閉鎖される前に、レストランで最後のディナーを済ませて外に出ると、道端に止めた車の脇の歩道で、若い黒人男性がうつ伏せになっていた。どうしたのだろうと見ていると、突然、腕立て伏せを始めた。

   目が合うと、「ジムが閉っちまったんだよ。でもエクササイズはしなきゃなんないだろ。だから、ここでやってんだよ」と笑った。

   長年、この街に住んできたけれど、今ほどニューヨークらしからぬ閑散とした光景を、これまでに見た記憶はない。

   そんな状況のなかで、腕立て伏せをしていた男性のユーモアが、私に希望を与えてくれた。(随時掲載)

++ 岡田光世プロフィール
おかだ・みつよ 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。米中西部で暮らした経験もある。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計40万部。2019年5月9日刊行のシリーズ第9弾「ニューヨークの魔法は終わらない」で、シリーズが完結。著書はほかに「アメリカの家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。

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