国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長が2020年3月17日、2020年東京五輪開催に向けて各国際競技連盟(IF)と緊急会議を行う。
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、各国で開催を予定していた五輪予選が相次いで中止、延期となっていることから、各競技の予選システムの見直しが検討される。
「IOCは無観客開催の選択肢はない」
ここまでIOCは、東京五輪を通常開催する姿勢を崩しておらず、今回の緊急会議は通常開催を前提として行われる。英国紙「ガーディアン」(電子版)は3月16日、東京五輪について「IOCは無観客開催の選択肢はない」と報じており、日本政府も通常開催を目指す方針に変わりなく、橋本聖子五輪相は17日、改めて「予定通り」開催する認識を示した。
IOC、日本政府の通常開催の意向に反して、世界のスポーツイベントを取り巻く状況は日々厳しさを増している。スポーツ大国の米国では疾病対策センター(CDC)が16日、今後8週間、50人以上が集まるイベントの中止を要請。わずか50人程度の小規模イベントにも規制をかけるほど深刻な事態に陥っている。
IOCのバッハ会長によると、現在代表に決まっているのは全競技のうち55%だという。新型コロナウイルスが猛威を振るうなか、世界各地で予定されている五輪予選はスケジュールの変更を余儀なくされ、代表の選考にあたって大きな混乱をきたす可能性も。現実と向き合えば、今夏の通常開催は決して楽観視できない。
1年延期だと2つの世界選手権とバッティング
このままウイルスの感染状況が好転しなければ、大会の延期もひとつの選択肢となるだろう。ただし、1年後の2021年は2つのビッグイベントが控える。7月には日本で水泳の世界選手権が予定され、8月には米国で陸上の世界選手権が控える。1年後に五輪を開催するのならば、五輪と重複する2つの世界選手権のスケジュールを見直す必要が出てくる。
延期期間を「2年」とした場合はどうだろうか。2022年は北京で冬季五輪の開催が予定されている。2年後の開催となれば、代表選考の再考問題など解決すべき課題は残されるものの、五輪を通して「アジアから平和を発信する」という意義は見出せる。冬季、夏季の同年開催は、「平和の祭典」を掲げる五輪理念に寄り添い、スケジュール的にも理想的である。
新型コロナウイルスが欧米での感染を広げる中、五輪の開催問題はもはや日本のものだけではなくなりつつある。IOC、日本政府はあくまでも今夏の通常開催に向けて準備を進めているが、多くの国民の理解を得るのは難しいだろう。五輪の理念に従い、観客を入れて開催するのであれば、大会を延期して安全上の問題を完全にクリアしてから開催するのが現実的だろう。