電子マネーやクレジットカードで買い物する際にすっかり定着した「キャッシュレス決済のポイント還元制度」で、不正にポイントを受け取ったと疑われる事例が6000件弱あったと、2020年2月下旬に報じられた。
その総額は約400万円。手口は何とも「セコい」ものだが、制度は国が実施しており、還元されるポイントはもともと国民の税金であるだけに、再発防止に向けた対策が急がれる。
現金を懐に入れて、店員がクレカ決済
代表的な手口はこうしたものだ。ポイント還元制度に登録した店舗で客が現金で買い物をしたにもかかわらず、店員がそのまま入金せずに自身のクレジットカードや電子マネーで代わりに決済して、その現金を懐に入れ、還元される最大5%のポイントも手に入れる。この場合、客も店も損はしない。他にも手口はあるようだが、制度を所管する経済産業省は、模倣される恐れがあるとして、詳細を明らかにしていない。発覚した不正が疑われる取引については、ポイントは還元されないという。
ポイント還元制度は、19年10月1日の消費税率引き上げに伴う消費の冷え込みを緩和しようと同日に始まった期間限定の国の政策で、20年6月末で終了する。店舗は決済事業者を通じて登録する必要があり、その店舗数は100万店を超えた。条件として中小の事業者である必要があり、コンビニエンスストアやガソリンスタンドのフランチャイズ加盟店も対象になるが、こうしたフランチャイズ加盟店の還元ポイントは2%、それ以外の店舗は5%となっている。還元の原資に加え、制度のシステム構築やPR費用は国が予算を組んで支出しており、19年度と20年度を合わせて事業費は約7000億円に達する。