安倍晋三首相は2020年3月14日夕に記者会見を開き、13日に可決・成立した新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正法について説明した。安倍氏が新型コロナウイルスについて会見するのは2月29日以来、約2週間ぶり。
前回の記者会見では、多数の記者が挙手するなか質問を5問で打ち切り、批判が相次いだ。今回の会見では、打ち切りを宣言した司会者に記者席から抗議の声があがり、追加で4問の質問に答えた。前回は36分だった会見時間が52分に伸び、フリーランスやネットメディアの記者も指名する場面もあった。
「今後、必要かつ十分な経済財政政策を、間髪を入れず」
成立した改正法では首相が「緊急事態宣言」を出し、国民の私権制限もできるようになる。安倍氏は記者会見で、「現時点では緊急事態を宣言する状況ではないと判断している」として、法改正は「あくまで万が一のための備え」などと説明した。新型コロナをめぐる経済対策をめぐっては、自民党有志の若手議員が3月11日、当面は消費税率をゼロにすることなどを掲げた提言を発表している。安倍氏は
「こうした提言も踏まえながら、世界経済の動向を注意深く見極めて、さまざまな可能性を想定しながら、今後、必要かつ十分な経済財政政策を、間髪を入れずに講じていきたい」
などと提言に言及しながら、大規模な経済対策への意欲を示した。
米国のトランプ大統領が1年延期の可能性に言及した東京五輪・パラリンピックについては、
「感染拡大を乗り越えてオリンピックを無事予定通り開催したい」
と述べた。
「後段の方の、女性の白いお召し物の方」
首相会見では、司会者は記者席に座る記者の大半の名前を把握しており、「●●さん」と、名前を呼んで指名することが多い。この日の会見では、冒頭の2問を「幹事社から」と、幹事社の東京新聞と共同通信の記者を指名し、3問目と4問目は毎日新聞とウォール・ストリート・ジャーナルの記者の名前を呼んで指名。ここまでは通常どおりだったが、5問目には「後段の方の、女性の白いお召し物の方」を指名した。指名されたのはフリーランス記者の安積明子氏で、
「かなり大規模でないと効果的ではないのではないか」
などと経済対策の規模感を質問した。安倍氏は
「今の段階において、感染拡大阻止に全力を尽くしていきたいが、その後においては、この経済を安定させた成長軌道に戻し、国民の皆様に活気が戻り、笑顔が戻るように思い切った、大胆な、メッセージ性の強い対策をしていかなければならないと考えている。そのため、具体的にどういう対策を打っていくかにおいては、与党とともに練り上げていきたい」
と答弁した。
指名されたフリー記者は「事前通告」しておらず
会見開始から40分が過ぎ、8問質問を受けたところで司会者は質問を打ち切ろうとした。2月29日の会見と同様の事態が繰り返される可能性もあったが、直後に記者席から
「答えられないんですか?」
「こんなので記者会見って言えるんですか?」
といった怒号に近い抗議の声が上がり、会見は続行。追加で4問質問を受けた。追加で指名された4人のうち2人は「ニコニコ動画」の七尾功氏や、「IWJ」の岩上安身氏といった、ネットメディアの記者だ。
その後も挙手する記者はいたが、
「すいません、ちょっと予定を超えまして...。新型コロナ、大変重要なので、後席の方にもご質問いただきましたので、また毎日の(官房長官)会見でよろしくお願いします」
などとして会見は約50分で終了した。
首相会見でフリーランスの記者が指名されるのは極めて異例で、安積氏が指名されるのは初めて。安積氏は事前の質問通告はしておらず、指名は予想外だったという。安積氏は首相会見後に
「具体的な数字が出てこなかったのは残念だが、抽象的なりに『メッセージ性の強い対策』といった色々な表現をして質問に答えようという総理の思いは感じた」
などと話し、指名されたことに一定の評価をしていた。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)