かつては「会長の署名」が必須だった
今後に関して意味深な言葉を残した比嘉が選択したのは、「引退」ではなく「ジムの移籍」だった。白井・具志堅スポーツジムの公式サイトでは「この度、本人の希望により比嘉大吾は2020年3月11日の契約更新を行わず、この日をもって弊ジムを離れる事となりました。昨年夏、もう一度白井・具志堅スポーツジムで試合がしたいと本人たっての願いでジムに戻ってまいりましたが、このような結果となりました」と経緯を説明している。
24歳の元世界王者がデビュー以来所属していたジムを離れたことは、ボクシング関係者に少なからず衝撃を与えた。比嘉は現在、WBC世界バンタム級6位にランクされ、WBAでもバンタム級9位に入っている。WBC、WBAの2団体で世界王座への挑戦権を有する世界15位以内にランクされており、ジムを経営する立場からすれば、とてつもなく大きなものを失うことになる。
ボクシングの長い歴史において、選手がジムを移籍するのにいくつかの高い壁が立ちはだかった。これまでは、選手がジムの移籍を希望した場合、ジムの会長の署名が入った移籍届をJBCに提出する必要があった。これはルール化されたものではなく、ボクシング界の慣例として行われてきたもので、過去には移籍を巡り会長と選手間で数々のトラブルがあったという。