高校生以下にゲームの利用時間基準を設ける香川県議会の条例素案についてパブリック・コメント(意見公募)を議会が募ったところ、2000件超もの応募があったことにネット上で驚きの声が上がっている。
うち8割以上が賛成意見だとされたが、その理由について様々な憶測も流れている。通常はあまり来ないとされるパブコメに、なぜこんなに意見が集まったのだろうか。
県内2615件中2269件が賛成。しかし...
「今回のパブコメは明らかに不自然な数」「8割賛成は流石に怪しくないか」...
2020年3月12日に県議会であった「ネット・ゲーム依存症対策条例」(仮称)の検討委員会(委員長・大山一郎議長)で、1月23日から2月6日まで募ったパブコメに県内の個人・団体から2615件の意見が寄せられ、うち2269件が賛成だった。こうした内容がメディアで報じられると、ツイッターなどで上のような声が相次いだ。
素案に反対は、334件だった。一方、パブコメでは、県内外の事業者からも意見を募っており、寄せられた71件のうち、反対が67件も占めた。賛成はゼロだった。県民の反応とは、まったく逆になった形だ。委員会はこの日で終わり、素案を元にした条例案が閉会日の18日、本会議で採択される予定になっている。
こうした結果について、ネット上では、県民に対しては組織的に動きかけたのではないかと勘ぐる向きも出た。賛成のために動員をかけた疑いが持たれたわけだ。
そんな中で、香川県観音寺市議会の合田隆胤議員(自民)が「ネットゲーム依存症対策」と題して公式サイトに1月25日に出した投稿文の写真が、ネットで注目を集めた。パブコメのようにも見えるアンケートが10枚以上写っており、実際に「賛成・反対の有無」などの記入や意見の書き込みなどがあった。合田議員は、素案に賛成していることから、支持者らを動員したのではないかとの憶測も出た。
これに対し、合田議員は3月13日、J-CASTニュースの取材にこう釈明した。
「賛成のための動員」は事実無根
「賛成のために動員したというのは、事実無根です。写真は、確かにパブコメの用紙で、僕が独自に作りました。素案に賛成、反対、あるいは拒否でもいい。その人の意思で意見を書いてもらいましたので、パブコメでないというのは当たらないと思います。僕は、支援者やその家族などに、書いてくれたら届けますよと言って、県に届けただけです」
パブコメは、53、4枚を集め、うち2枚が反対だったという。また、個々の反対はあるものの素案全体はいい、とする意見もあったとした。
こうした行動をした理由について、合田議員は、次のように説明した。
「周りの方々から僕に、子供のゲーム依存症についての相談が次々に寄せられ、線引きするゲーム時間の基準を設ける対策を県にしてもらえればと考えたのがきっかけです。ゲーム全部を否定しているわけではなく、うまく付き合ってほしいということで、素案に賛否があるのはよく分かっています。県議会の方などから言われてやったわけではなく、あくまでも僕の独自判断でパブコメ集めを行いました」
県内で賛成のために動員する動きがあったかについては、「聞いたことがありませんので、そうしたことはないのでは? 2000件ほどもの動員があれば、もう表ざたになっているはずですよ」との見方を示した。
動員の疑いを巡っては、ネットメディア「ねとらぼ」が3月13日、県内の企業で多くの社員が賛成のパブコメ集めの名義貸しをしていたとの告発の手紙が来たとして、その一部をツイッターで公開した。ただ、その手紙の内容が事実なのかどうかは、現時点でははっきりしないようだ。
県議会「集計してなっただけで、理由は分からない」
2000件以上もパブコメが集まった理由について、県議会事務局の政務調査課は3月13日、「集計するとその数になったということで、事務局では理由は分かりません」と取材に答えた。
賛成のための動員については、「聞いていない」とし、合田議員の支援者らからのパブコメ集めには、「いいかどうかは何とも言えません」とした。企業ぐるみのパブコメ集めについても、聞いていないとし、上述の手紙の一部を公表したことには、情報がなかったので対応などは何も考えていないとしている。
なお、パブコメの募集期間を1か月でなく2週間ほどにしたことについては、議会で決めたことだとし、事業者以外を県民に限定したことは、「県の条例ですので、県民から意見をいただくことにしました」と話した。
素案への賛否の数を示したことについて多数決のようだと批判が出ていることに対しては、「数が多い少ないで決めておらず、それで結果が変わるのではないです」と説明した。
条例の検討委員会は、最終回の12日まで7回行われ、最後の2回は非公開としたが、その理由については、「落ち着いて議論をやりたいと考えたからです」としている。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)