2020年3月12日現在、中国全土で新型コロナウイルスに感染した患者の数は1万4897人である。ほとんどの省、自治区と直轄市では新しい患者数がゼロの状態を保っている。3月10日には、中国のトップレベルの指導者が武漢を視察し、少なくとも新型コロナとの戦いの第一段階は終わったと思われる。
マスク、手洗い、消毒などは、ここ3か月の間で中国社会でもっとも頻繁に聞く言葉となっている。とくに消毒は日常的な行動となっている。
そうしたなかで、在中国日系企業は、製品の抗菌、抗ウイルスの特徴を生かして今、中国で大ヒットを連発している。
触らず乗れる日立の抗菌エレベーター
新型コロナの感染者が拡大するなか、北京では市民がエレベーターに乗るとき、ライターで行くフロアを押して、すぐその後、ライターで火をつけ、押したところを消毒する光景が見られる。また多くのエレベーターにはティッシュが用意されており、そのティッシュでボタンを押す人も少なくない。
利用者は普通のエレベーターには2人、大きいエレベーターでも5人ずつ乗るようになり、エレベーターで感染されたケースは聞かないが、北京市民はエレベーターに乗ることを非常に恐れている。
このため、日立電梯(中国)有限公司は、さっそくノータッチでエレベーターに乗る方法を新型コロナの患者を出た団地のビルに取り付けた。同社技術担当副社長の梁東明さんは新しいサービスを紹介した。
「携帯電話のアプリでエレベーターを呼ぶことができます。アプリを持たない人でもQRコードでスキャンして、いく先を入力するだけで結構です。オフィスビルでは顔認識技術で勤務するフロアに自動的に止まります。さらにブルートゥースなども使えます」
ノータッチ方式を既存のエレベーターや他社のエレベーターにも取り付けることもできるという。ポスト新型コロナでは、すべての中国のエレベーターにノータッチ方式が取り入れられるようになるだろう。
日立電梯製のエレベーターは現在、中国では35万台ほど使われており、今後市場開拓にはこのような機能を持っていることだけで非常に有利である。
さらに、日立電梯の場合、中国ではそのエレベーターにつけている紫外線消毒機能、空気抗菌浄化機能、抗菌ボタンなどの技術を持っており、普通の利用者は気が付いていないが、今度の新型コロナの中で日立電梯がそうした技術を明らかにしたことで、たいへん注目されている。
富士フイルムは銀イオンのスプレー
2019年11月に開かれた「上海輸入博」で、富士フイルムのブースを取材した時に、携帯電話用の抗菌フィルムを記念品としてもらい、今も使っている。
銀イオンの抗菌、抗ウイルスの機能はよく知られているが、富士フイルムはそれにアルコールを加え、持続的に菌を抑制できるティッシュとスプレーにして銀系抗菌製品を開発した。富士フイルム(中国)投資有限公司の製品担当者は、2年前に製品を中国科学院理化研究所と武漢大学ウイルス研究所等に提出して、抗菌・抗ウイルスの効果について測定してもらい、非常に高い抗菌、抗ウイルス機能が証明されたことを振り返りながら
「中国では抗菌意識が弱く、当初は市場喚起は難しかったですが、新型コロナが猛威を振るっている現在、品薄となり、超人気を得ている」
と語っている。
銀イオンを含む製品について、富士フイルムはラインナップを増やしている。
リコーの加湿器に入れる空気清浄剤も品薄に
リコーは2019年12月から室内、オフィスの抗菌抗ウイルス対策に使う日本製の「空気笑顔」を中国で販売するようになった。加湿器にこの「空気笑顔」を入れて加湿すると、密閉された部屋の空気中及び机等に付着した菌、ウイルスを除去する清浄剤である。
ちょうど1月から新型コロナウイルスがまず武漢で猛威を振るい、その後全中国にも脅威が広がると、「空気笑顔」が中国で人気を呼ぶようになった。
しかし、2月以降、日本でも新型コロナの脅威が高まってきてため、リコー(中国)の連席総裁の于浩さんは、
「日本も厳しくなるとは思いもよらなかった。中国へは大量に輸出することは出来なくなったが、今後の販売は非常に有望です」
と話す。
日本企業は抗菌・抗ウイルス関連の製品、サービスなどをたくさん持っている。世界で広がっている新型コロナによって、そうした製品は開発時の予想を超えて大きな市場を開拓する可能性がある。
(在北京ジャーナリスト 陳言)