令和初となる大相撲春場所(大阪市・エディオンアリーナ大阪)が、2020年3月12日で5日目を迎えた。新型コロナウイルスの影響で無観客、さらに「協会内で感染者が出た場合は中止」といった厳戒態勢の中で行われている。
史上初となった「無観客場所」の序盤戦を振り返り、好角家の漫画家・やくみつる氏は、どう思うのか? J-CASTニュースが取材した。
プラスは「稽古場さながらの音」
無観客場所をテレビで観戦しているというやく氏は、同場所を見て、
「プラス面とマイナス面があると思います」
とのことだった。まず、プラス面については、
「音がね。稽古場さながらと言いましょうか。肉弾相打つ音、摺り足の音、力士同士の呼吸する音...。そういうところは、お客さんの歓声がない分、リアルな臨場感をもって感じられます」
一方で、マイナス面は、
「暗澹(あんたん)と進行しているような気がしますね。何というか...大相撲(盛り上がる相撲)が少ないように思えます」
確かに、同感だ。筆者も相撲担当記者を数年やったが、稽古場のような雰囲気の中で淡々と取組が進む。そして、大相撲も少ない。大相撲は観客の大声援、その後押しに格下力士が横綱を破った時に座布団が舞飛ぶといった、会場一体となってなし得るものだ。
一方で、新型コロナウイルスの感染拡大についても警鐘を鳴らす。
「心配ですね。相撲界は、旧態依然とした組織ですから。ケガや病気でも、師匠から『気合で治せ!』と言われる世界です。もし、下っ端の力士で熱が出たとした場合、力士は『バレたらどうしよう...』と思うこともあるかもしれませんよね。それを協会が丸め込んでしまうようなことがなければいいのですか...」
白鵬は誕生日白星、高安は左足肉離れ...
4日目は、3月11日。東日本大震災から丸9年だった。同日、35歳を迎えた白鵬は、隠岐の海(東前頭2)を上手投げで下して4連勝とした。取組後には勝利インタビューに応じたが、笑顔もなく、淡々と「勝つことが、勇気になってくれたらという思い」とのコメントをメディアに語っている。
また結びの一番で横綱・鶴竜と対戦した元大関・高安(西前頭筆頭)は、鶴竜に突き落としで負けた際に左脚を負傷。しばらくは土俵から立ち上がることもできず、力士用の大きな車いすで運ばれて行き、結果は「左足肉離れ」という診断だった。
中でも、やく氏が気になるのが鶴竜だという。年齢は白鵬より1つ下の34歳だが、やく氏は取組を見て、
「(現役の)限界は過ぎているでしょうね。苦しいと思います」
鶴竜は、昨年9月に亡くなった井筒親方(元関脇・逆鉾)の元に弟子入りしたが、まだ日本国籍を取得していないため、引退しても井筒の名跡を継ぐことができない(現在は陸奥部屋所属)。
やく氏は、鶴竜について、
「待ったなしの状況が続くでしょう。早めに(日本国籍取得の)ハンコでも押せれば、井筒の名跡を継ぐこともできるのでしょうけれど...」
揺れ動く相撲界の未来について、切々と語った。
(J-CASTニュース編集部 山田大介)