東海道新幹線は2020年3月14日に実施するダイヤ改正で、1時間に「のぞみ」をこれまでの最大10本から12本に増発する。
直前に700系電車が完全に引退し、JR東海が進めてきたN700系への統一と折返時間の短縮などで実現したダイヤだが、予期せぬ新型コロナウイルス感染拡大の影響で最近の利用者は激減しており、出鼻をくじかれた形だ。
毎年過去最高を更新し続けたが...
1992年に「のぞみ」が300系で運行を開始したが、東海道新幹線は複数の車両形式による運行が続いた。最高速度や座席数が異なる車両を使う限り、車両運用は煩雑で性能を十分に発揮しづらくなる。
2007年にN700系が営業運転を開始すると、マイナーチェンジ版のN700Aと共に300系・500系・700系の淘汰を進め、このほどN700系への統一が実現した。
N700系は700系から最高速度(時速285㎞)・加速度がともに向上し、車体傾斜装置の採用で急カーブでも時速270㎞で走行可能になった。700系よりも「俊足」のN700系は東京~新大阪間を700系より5分短縮、東海道新幹線の全列車がN700系に準拠したダイヤで運行できる。新ダイヤでは最大1時間あたり12本の「のぞみ」運転が可能になり、原則毎時2本ずつ運転の「ひかり」「こだま」と合わせて最繁忙期には1時間あたり16本という通勤ラッシュ時並みの本数が実現した。20年7月から運行開始のN700Sも同等の性能を発揮する。
もっとも毎日この本数で運転されるわけではない。運転日を繁忙期のみに設定している臨時列車が多数あり、例えば3月20日の下りダイヤでは7~11時台に毎時8本の臨時「のぞみ」の設定があり、毎日運転の「のぞみ」は毎時4本にとどまる。これらを含めての運転本数である。
東海道新幹線は2009年以降年々利用者が増え、13年からは毎年過去最高を更新し続けている。金曜日や週末夜間は満席の列車が多く、行楽シーズンには自由席は通勤電車並みの混雑を見せる。増えるインバウンド、また東京五輪に備えての列車の増発のはずだった。
「こんな新幹線見たことない」
ところが、こうして超過密ダイヤを実現したはずの東海道新幹線は、現在新型コロナウイルスの流行で大幅に乗客を減らしている。すでに2月20日時点で東海道新幹線の2月の利用者数は前年比で8%減少していると報じられ、3月1日から9日の利用者数に至っては前年比56%減と、半分以下にまで落ち込んでいる。
新幹線の乗客からは「こんな新幹線見たことない」といった驚きとともに、車内に乗客がほとんどいない列車の写真がツイッターなどにしばしば投稿されている。
厄介なのは、短距離利用が多い「こだま」が前年比53%の利用者数で持ちこたえている一方で、旅行や出張での利用が多い「のぞみ」「ひかり」が、それぞれ前年比43%、42%と乗客が激減していることだ。稼ぎ頭のはずの「のぞみ」が大打撃を受けている。
これでは、せっかくののぞみ「最大12本」ダイヤも持てあましてしまう。20年の春休みと5月の大型連休では、新ダイヤを生かして1日最大上下458本(3月27日と5月6日)の「のぞみ」を運転する計画だったが、予定通りのダイヤで運転できるのか。3月11日時点でJR東海に取材を行ったところ、春休みや5月など繁忙期の臨時列車については需要に応じて列車設定を見直す可能性もあるという回答だった。臨時列車の削減も考えられるため、「のぞみ」の「1時間に最大12本」運行がいつ実現するのかは見通せない状況になっている。
東海道新幹線のダイヤは日ごとに細かく列車の運転日が変わっていくが、ウイルス感染の終息時期が見通せないなか、のぞみ増発も盛り込んだ新ダイヤが十二分に能力を発揮できるまで時間がかかりそうだ。
(J-CASTニュース編集部 大宮 高史)