JR山手線で49年ぶりの新駅となる「高輪ゲートウェイ駅」の看板のフォントに「明朝体」が採用され、「見づらい」などとインターネット上で不満の声が相次いでいる。JR東日本の駅看板の多くに使われるゴシック体と比べ、視認性が低いと指摘する人も少なくない。
そもそもなぜ明朝体が使われたのか。取材に応じたJR東によると、同駅を設計した建築家の「和のコンセプト」という提案を受け、最終的に同社が決定。視認性のテストも実施しているという。
「明朝体フォントに違和感」「「明朝体、普通で良いじゃない」
JR東は2020年3月9日、高輪ゲートウェイ駅舎をメディア向けに公開。同駅は品川駅と田町駅の間の新たな駅として、14日に開業する。
外装や内装が報じられると、注目されたのがフォントだった。駅舎外観や、改札の上に大きく設置された「高輪ゲートウェイ駅」の文字が、JR東の駅ではあまり見かけない「明朝体」だったためだ。ゴシック体と比べて特に横線が細いなど、確かに違いがある。
ツイッター上では、
「高輪ゲートウェイ駅よ。なぜ其方は明朝体なのだ。なぜ...」
「デザイン・視認性の点からゴシック体の方が最適と思った次第です」
「高輪ゲートウェイ駅の駅名明朝体で書かれてんのやばいな、とんでもなく見づらい」
「名前もダサければ看板も明朝体デスカ...。もちょっとユニバーサルデザイン的な物を期待したのにな」
などと不満の声が。一方で、
「『高輪ゲートウェイ』が明朝体(ヒラギノ?)なの、駅の雰囲気に合わせて書体を変えるのは別にいいんじゃないって思ってます」
「明朝体がだと見づらいとかガチャガチャ言ってるがどーでも良くないか?」
「明朝体、普通で良いじゃない」
と理解を示す声もある。
「視認性の確認を実施しております」
JR東の広報は11日、J-CASTニュースの取材に「(高輪ゲートウェイ駅舎を設計した)隈研吾氏から『和のコンセプト』ということで今回のデザインを頂き、最終的に当社で明朝体を用いることを決定致しました」と明朝体を採用するまでの流れを説明する。
ゴシック体を用いた駅が多いものの、完全にゴシック体で統一しているわけではないという。
「基本的に当社の『サインマニュアル』に則って表記していますが、駅名標のデザインについては、駅舎に即した形状や書体を用いてよいと定めています。必ずしも『書体はゴシック体でなければいけない』という決まりはありません。今回、高輪ゲートウェイ駅は明朝体にしておりますが、他の駅の看板では、たとえば筆文字のようになっているところもあります。全てがゴシック体というわけではない点はご理解いただきたく思います」
「見づらい」といった指摘については、「当社の『サインマニュアル』に則って視認性の確認を実施しております。駅名標から一定程度離れても見えるかどうか、といったことの確認です」とし、次のように話す。
「一般論ではありますが、たとえば駅に行く時は地図やアプリなどで予め場所を把握した上で向かうことが多いと思います。目的をもって駅を訪れると思いますので、着いてから『ここは何という駅だろう?』と確かめる状況はなかなか想定しづらいところがあります。もちろん、そうした事態を補完する役割として駅名標が必要になると思いますが、いずれにしても視認性は確認しており、駅の所在地も示しております」
明朝体で「和」→駅名の「ゲートウェイ」は?
「和のコンセプト」については、JR東が19年12月に発表した高輪ゲートウェイ駅の概要の中でも、「隈研吾氏をデザインアーキテクトに迎え、国際交流拠点の玄関口として、随所で『和』を感じられるデザインとしました」と説明されていた。今回、明朝体も「和」の一環であるという情報がネット上に伝わると、「『和』を強調するなら駅名からカタカナを外しては?」などと名前の「ゲートウェイ」がやり玉にあがることになった。
このような指摘について、JR東の広報は、
「ゲートウェイという名前をつけた理由には歴史的な背景があります。高輪はかつて大木戸(編注:江戸時代に国境・都市の出入り口に設けた関門)があり、多くの旅人でにぎわう江戸の玄関口の役割を果たしていた地域です。そうした背景からつけた名前ですので、横文字を用いたことをもって、和のコンセプトと不一致ということにはならないのではないかと考えています」
と話している。