春の選抜、中止を発表 当初の「無観客」が一転した理由

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   日本高野連は2020年3月11日、大阪市内で臨時運営委員会を開き、第92回選抜高校野球大会(3月19日開幕・甲子園球場)の中止を決定した。

   新型コロナウイルスの感染拡大を受け、大会の開催が危ぶまれるなか当初は無観客開催に向けて準備を進めていたが、プロスポーツやその他の高校スポーツの状況を踏まえ、大会を中止する決断を下した。選抜高校野球大会の中止は大会史上初めてとなる。

  • 甲子園球場
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高校スポーツの全国選抜大会はすべてが中止に

   政府による大規模イベントの自粛要請、休校要請などを受け、プロスポーツでは試合の中止、延期が次々と決定し、高校スポーツでは3月中に予定されていた全国高校選抜大会のすべての競技が中止となった。政府は3月10日に大規模イベントの自粛要請期間を10日間程度延長した。このような状況下でスポーツ界が自粛ムードに傾くなか、高野連もこの流れに抗うことはできなかった。

   高野連は4日の臨時理事会で大会の開催可否について結論を先送りしたが、無観客での開催を目指して準備を進めていく方針を打ち出していた。9日には日本野球機構(NPB)とJリーグ主催の「新型コロナウイルス対策連絡会議」に小倉好正事務局長が出席し、専門家のアドバイスを仰いだ。

   政府は当初、大規模イベントの自粛期間を3月11日までとしており、高野連は自粛期間ギリギリまで結論を出さなかった。一方、野球以外の高校スポーツでは3月5日までに、3月中に開催される全国高校選抜大会のすべての競技を中止することを決定した。政府の大規模イベント自粛要請に加え、休校要請もあり全国高等学校体育連盟に加盟する各競技団体は早々と決断を下した。

無観客開催でも資金は十分だったが...

   高体連に属さず、高野連に加盟する高校野球は資金面で恵まれており、大会の運営だけに目を向ければ無観客開催は十分可能だった。甲子園大会の主な収入源は入場料で、主催者である高野連と毎日新聞社によると、昨年の第91回大会の入場料収入は3億2828万1435円だった。この他に394万7949円の物品販売等の収入があり、テレビの放映権料は発生しないため、収入の合計はこの2つを合わせた3億3222万9384円だった。

   収入3億3222万9384円に対して、支出は2億4148万8313円だった。最も多い支出となったのが、大会費の1億1277万5019円で、これに出場選手費の5051万2353円が続く。この他には、少年野球振興助成金、日本学生野球協会助成金、全国高校軟式野球選手権助成金、日本中学校体育連盟助成金などの支出がある。なお、会場として使用する甲子園球場は無料で貸し出されているという。

   資金面でいえば、昨年の大会だけで約9000万円もの余剰金がある。過去の大会では、高野連と毎日新聞社よると、第90回大会は約5000万円、第89回大会は約4000万円、第88回大会では約7000万円の余剰金があった。今大会が無観客で開催され、3億円前後の入場料収入が得られず、2億円以上の支出があったとしても、これまでの大会の余剰金で補填することが十分可能だった。

大会を直前に控え予防対応策に追われ

   その一方で、大会開催にあたり新型コロナウイルスの感染拡大の予防対応策に追われた。選手、大会関係者の健康管理および球場内における環境整備が急務となり、選手が共有するベンチやトイレなどの清掃、消毒対策が課題となっていた。19日に予定されていた開会式が中止になったとはいえ、試合会場には選手をはじめ運営スタッフなど多くの関係者が詰めかけ、これらの接触は避けられない状況にあった。

   大会開催の可否の結論をギリギリまで先延ばし、無観客での開催を目指したものの、新型コロナウイルスの感染拡大が収まる気配はなく、苦渋の決断を下した。3月開催予定の高校スポーツのすべての全国選抜大会が中止となるなか、唯一野球だけが無観客開催を目指していたことに対して、世間から厳しい声が上がっていたのも事実。最後まで大会開催を信じていた球児たちにとって、第92回大会は幕を開けることなく終わりを告げた。

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