「今回も何だって起こり得る」
民主党のエスタブリッシュメントは、「サンダース降ろし」に躍起になっているように見えるが、サンダース氏は自らを「democratic socialist(民主社会主義者)」と呼び、主張がはっきりしているのに対し、バイデン氏は経験こそあるものの、バイタリティや斬新さに欠ける。息子ハンター・バイデン氏がウクライナの企業と癒着していたとの疑惑が今後、悪影響を与える可能性もある。バイデン氏は、演説などで失言や誤った発言も多い。
サンダース氏相手ならトランプ氏が勝利すると見ていた共和党にとって、スーパー・チューズデーでのバイデン氏の大勝利は誤算だったようで、保守系でトランプ支持色の強いFOXニュースは毎日のように、バイデン氏の失言を揶揄する報道を流している。
これまでトランプ氏が再選すると信じていた人たちも、株価が立て続けに暴落し、新型コロナウイルス感染が拡大し続けるなか、先が見えない状態になってきた。3月9日も米国株は、2008年のリーマン・ショック級の急落となった。今後、新型コロナウイルスの被害がさらに大きくなり、景気が悪化すれば、トランプ政権にとって痛手となる。
3月10日には、アイダホ、ミシガン、ミシシッピーなど全米6州での予備選挙が始まった。17日には激戦州となるフロリダを含む4州の予備選と、大きな戦いが続く。
「2016年の大統領選では、誰も予想しなかったようにトランプが勝利したのよ。
今回も何だって起こり得る」
マンハッタンのバス停で出会った2人目の女性は、民主党の勝利に期待を込めてそう語った。私はつい最近までトランプ氏再選を確信していたが、今はその行方を静かに見守っている。(随時掲載)
++ 岡田光世プロフィール
おかだ・みつよ 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。米中西部で暮らした経験もある。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計40万部。2019年5月9日刊行のシリーズ第9弾「ニューヨークの魔法は終わらない」で、シリーズが完結。著書はほかに「アメリカの家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。