東日本大震災から、2020年3月11日で丸9年を迎える。10年の節目も見えてくるなか、兵庫県出身の女優・のんさん(26)の「岩手愛」が止まらない。
のんさんは2013年4月〜9月、東日本大震災前後の三陸地方を舞台にした連続テレビ小説「あまちゃん」で主人公・天野アキを演じた(当時は本名の能年玲奈で活動)。それ以降、岩手に寄り添い、また支えられ続けている彼女の7年間を振り返る。
架空の街「北三陸市」が舞台
「あまちゃん」は、宮藤官九郎さん脚本。東京の下町と、岩手県久慈市周辺をモデルにした「北三陸市」を舞台に、海女とアイドルの二足のわらじを履くアキの成長物語となっている。
劇中は08年から12年にかけての設定で、終盤には東日本大震災による津波で大打撃を受けた「北三陸市」の復興も描いた。驚いたときに出るフレーズ「じぇじぇじぇ」は、その年の「ユーキャン新語・流行語大賞」年間大賞に(他3語とともに受賞)。年末のNHK紅白歌合戦でドラマ特別編が放送されるなど、まさに社会現象と言える作品となった。
その後、のんさんは映画「ホットロード」「海月姫(くらげひめ)」に主演するも、メディア露出は激減。15年には当時の所属事務所との契約トラブルが報じられ、16年に「のん」名義での活動を開始した。ファンが「干されたのではないか」と心配するなか、再出発を支えたのが、岩手の人々だった。
岩手県知事みずからバックアップ
その代表例が、岩手県の達増拓也知事だ。達増知事は「あまちゃん」放送中から、応援ツイートをたびたび投稿していた。その「お礼」と言えるだろうか、のんさんが改名後、初めて公に姿を見せたのは、知事への表敬訪問だった。達増知事は、その日(16年8月8日)のツイートで、
「岩手県は、県庁内に『プロジェクトN』を立ち上げ、のん活躍の場を作ります」
と表明している。
その後、翌17年1月にJA全農いわての「純情産地いわて宣伝本部長」となり、岩手銀行のイメージキャラクター、復興庁の「共創力で進む東北プロジェクト」応援キャラクターなどと立て続けに就任した。
あまちゃんにも登場した三陸鉄道(劇中では北三陸鉄道)のリアス線が、19年3月に全面開通すると、その記念式典に出席。今夏に予定されている東京五輪聖火リレーでも、岩手県区間(6月17〜19日)を走ると発表されている。
「創作あーちすと」と自称するクリエイターでもある、のんさん。初監督となった映像作品「おちをつけなんせ」(19年10月公開)は、岩手内陸部の遠野市で撮影された。制作ドキュメント「のんたれ」や本編は、YouTube Japanの公式コンテンツ「YouTube Originals」として公開されている。
「親戚のように迎えてくれる」
女優としても、20年3月6日公開の映画「星屑の町」(杉山泰一監督)のヒロインとして、久慈市内でのロケに挑んだ。10日に出演した「あさイチ」(NHK総合)では、
「みなさん本当に親戚のように迎えてくれて、(第2の)故郷だなって思います」
「『いらっしゃい』じゃなくて、『おかえり』って言ってくれて、そこがすごい嬉しいです」
と撮影を回想。ツイッターでは視聴者から、
「のんちゃん久慈の人にめっちゃ愛されてる」
「岩手のCMで毎日見てるけど全国版で見るとまた違って見える」
「達増拓也知事はのんを応援するためのプロジェクトを作って本当に応援し続けたからそこはまじで評価する」
といった反応が出ていた。のんさんは11日夜の「NHKニュース7」にも出演し、被災地との関わりについて話す予定だ。
関西出身ながら、のんさんが「岩手の顔」として受け入れられたのはなぜか。達増知事は、朝日新聞デジタル(18年12月5日配信)のインタビューで、こう分析していた。
「大震災という不条理の中で頑張っている県民の立場からすると、芸能界や世の中の不条理と戦っているのんさんは、同志みたいな心の響き合いがあったと思います」
(J-CASTニュース編集部 城戸譲)