政界各地で株式市場が乱高下している。新型コロナウイルスの感染拡大にともなう景気減速への懸念も一因だが、石油の減産をめぐる協議が決裂したことで原油価格が暴落したことも引き金を引いた。
米国のトランプ大統領が大規模な経済対策に言及したこともあって、2020年3月10日の東京株式市場の終値は3営業日ぶりに反発。ただ、その内容によっては、再び下げに転じる可能性もある。
OPEC & 非OPECの協調減産の体制が崩壊→増産見通しで相場暴落
原油をめぐる交渉の舞台となったのは、石油輸出国機構(OPEC)と非OPEC主要産油国で構成する「OPECプラス」。OPEC側が、サウジアラビアが主導する形で協調減産の強化を打ち出したが、非加盟国のロシアは同意しなかった。背景には、減産が続いていることに対する、ロシアの石油会社の反発があるとの指摘もある。
交渉決裂の結果、約3年にわたって続いてきた協調減産の体制は崩壊。サウジが生産量を大幅に増やすとの見方が広がり、3月9日の原油先物相場は大幅に下落した。米国産標準油種(WTI)は24%値を下げ、湾岸戦争があった1991年以来の下落率を記録した。
株式市場も暴落。9日のダウ工業株30種平均は前営業日比2013.76ドル安の2万3851,02ドルで取引を終えた。1日の下落幅としては過去最大で、19年1月中旬以来の安値だ。下落率の7.79%はリーマン・ショック時の08年10月以来の大きさを記録した。この日は、取引開始直後にS&P500種平均株価指数の下落率が基準値の7%を下回り、13年に現行ルールが適用されてから初めて「サーキットブレーカー」が発動。15分間にわたって取引が停止されるという、記録ずくめの1日となった。
トランプ氏大統領が打ち出す「極めて劇的」な対策は...?
これを受けた3月10日の東京株式市場の日経平均株価は、朝方は売りが先行して下げ幅は一時800円を超えた。ただ、3月9日(現地時間、日本時間10日午前)に米国のトランプ大統領が給与減税を柱とする、経済を下支えするための「極めて劇的」な対策を行うことを発表。この影響で買い戻しの動きが広がり、終値は前日比168円36銭高の1万9867円12銭まで戻した。
トランプ氏の記者会見での発言によると、詳細は議会との協議を経て、3月10日午後(現地時間、日本時間11日午前)に記者会見して発表する。「極めて劇的」なはずの経済対策の規模によっては、市場に失望が広がる可能性もある。国内に目を転じると、安倍晋三首相は3月10日の新型コロナウイルス感染症対策本部で、大型イベントの開催自粛を「10日間程度は」継続するように求めた。これも市場にとってはマイナス材料だ。