群馬県太田市での新型コロナウイルスの対応をめぐる、清水聖義市長(78)のツイートに多くの違和感が示されている。感染の確認を発表した2020年3月8日、清水市長は感染者の結婚の有無や職場での働きぶりをツイッターで公表したためだ。
感染者が見つかった自治体ではプライバシーや個人情報保護に配慮し、最低限の情報公開にとどまるケースが多い。今回の公開内容は異例ともいえる。
市は取材に「誤解を招きかねない」として、ツイートはすでに削除したと話す。
公衆衛生上の必要性はある?
太田市の公式サイトでの発表によると、感染したのは市内に住む保育士の女性。そのほか、「年齢」「勤務地」「症例経過」「行動歴」「接触者」が明かされている。
清水市長は8日にツイッターで、この女性が勤務する保育園の園長の話として、結婚の有無や職場での立場・評価を書き込み、「まさか、自分が感染してくるとは思ってもみなかったろうに。気の毒なことだ。重症化したとのことだが回復するよう願っています」と続けた。
この情報に対してユーザーからは、公衆衛生上の必要性を感じられず、個人情報保護の観点から問題視する声が相次いだ。感染者をめぐっては、個人情報がむやみに詮索されたり、不当な差別を受けたりするケースも出ている。
情報公開の範囲については自治体ごとにばらつきが出ているが、清水市長の公開内容は異例といえる。感染症法では、国と都道府県に「感染症の予防のための情報を積極的に公表しなければならない」としつつ、「個人情報の保護に留意しなければならない」と注記する。
本人の同意得た?
市秘書室は9日、J-CASTニュースの取材に、ツイートは8日の記者会見の内容に基づいていると明かした。結婚の有無や職場での評価は、同席した園長が報告したといい、それぞれの意図を「(既婚で)お子さんがいれば学校で接触があるとの意味も含めて、そちらを心配する人がいるのを考慮して園は出したのでは」「働きぶりは、濃厚接触が一番問題になるので、どのような立場だったのか説明したのでは」と推測する。
感染者本人の同意を得ているかについては、把握していないという。
ツイートは取材時までに削除され、「この文言だけで一人歩きしている部分もあるので、正確な情報を発信する意味でも誤解を招きかねないとして削除した」と説明した。