「アマビエ」――そんな名前の妖怪を、あなたはご存じだろうか。
直近の1週間ほど、この一風変わった妖怪のイラストが、ツイッターをはじめとするSNSに次々と投稿されている。アマビエには疫病に際して「自分を描いた絵を見せよ」と人々に伝えた、という伝承があり、新型コロナウイルスの流行が続く今、にわかに脚光を集めているのだ。
江戸末期に肥後に出現
アマビエは江戸時代末期の弘化3年(1846年)、肥後国(熊本県)に出現した怪異として、当時の新聞である瓦版にその姿が収められている。
この瓦版によると、何やら海に夜ごと光るものがあり、役人が調査に赴くと、奇妙な妖怪が姿を現した。
妖怪は、
「私は海中に住む『アマビエ』である」
と名乗り、
「もし疫病が流行るようなことがあれば、私を描いた絵を人々に見せよ」
と告げて、再び海の中に消えたという。
この瓦版には、その役人が見たという「アマビエ」が描かれているのだが――。これがなんとも不思議な姿だ。しいて言えば人魚に近いが、くちばしが生えており、目はひし形、ただし黒目はくりっと丸い。また、足というべきか尾びれというべきか、は3つに分かれ、さらに長い髪のようなものが足元まで伸びている。描き手の画風もあってか、妖怪というより「ゆるキャラ」めいた雰囲気だ。
あの「いらすとや」にも登場
以前から一部の妖怪ファンの間では知られていたアマビエが、一気に注目を集めるようになったのは2020年2月の末ごろから。新型コロナウイルスの流行に、どこか息苦しい空気が漂うなか、瓦版にある伝承に注目し、アマビエの絵をツイッターなどに投稿する動きが、自然発生的に始まったのである。
ハッシュタグ「#アマビエ」を付けて、多くのユーザーが、自分流にアレンジしたアマビエのイラストを投稿しており、中にはぬいぐるみやフィギュアを自作する人も。イラストレーターの、みふねたかしさんが運営する素材サイト「いらすとや」にも5日、早くもアマビエが登場した。
Yahoo!リアルタイム検索の集計によれば、「アマビエ」を含む投稿は2月27日ごろまで1日10件弱程度だったが、3月に入って急激に上昇。8日には2万件近くに達するなど、「アマビエ祭」状態だ。