他原発より「ハードルが低い」理由
世間の相場観として、「女川2号機への地元同意の壁は高くないとみられている」(産経新聞2019年11月29日「主張」=社説に相当)と言われる。震災直後、津波に耐えた女川原発には最大364人の被災者が避難したこともあり、「地元との関係は良好」(電力業界関係者)。同じBWRで地元の同意を得るのに手間取る東電柏崎刈羽6、7号機(新潟県)や日本原電東海第2などとの違いで、「事故後に再稼働する最初のBWRとなる可能性がある」(大手紙経済部デスク)との見方が強い。
とはいえ、反原発の世論が収まったわけではない。2019年2月に、再稼働の是非を問う住民投票条例の制定を求める署名が県内有権者の5.75%にあたる11万1743人分集まった。条例案は2月県議会で否決されたが、安全審査パスを受け、県議会野党4会派が2020年2月議会に改めて条例案を提出(3月3日に否決)するなどの動きは、県民の間の不安の根強さを示している。
また、2019年11月には石巻市民17人が県と市を相手取り、避難計画は実効性に欠けるとして「地元同意」の差し止めを求める仮処分を仙台地裁に申し立て、係争中だ。事故が起きれば、放射性物質の検査待ちの車で渋滞が起き、「30キロ圏を脱出できず避難所にたどり着けない」という訴えだ。高浜原発(福井県)や伊方原発(愛媛県)をめぐって運転差し止めの仮処分決定が出たケースもあり、裁判の行方も再稼働に直結する。