前田道路の「勝算」 TOBへの捨て身抵抗続ける内幕は

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巨額配当の「二重の意味」とは?

   前田建設のTOB条件には「前田道路が単独純資産の10%に相当する額を上回る額の配当を実施する場合、TOBの撤回等を行うことがある」と期されていて、まさにこの条件に該当する配当だということ。ただ、単純にこの数字を満たすには200億円余りの配当でよく、600億円は過大に見える。

   そこで、もう一つの意味(狙い)が見える。前田建設のTOBには下限が設定されていないため、51%の上限に届かなくても、株主が応募した株は前田建設に渡る、つまり30%なり40%なりの株を握ることもありえる。前田道路としては経営の手足を縛られ、今回は免れても、行く行くは子会社化されないとも限らない。だから、TOBを撤回してもらう必要があり、配当額を増やし、前田建設の意欲を完全に削ごうとした――というわけだ。

   過去1年、主に2000円台前半を中心に推移し、直近では2600円台で小動きだった前田道路株はTOB発表を受け、1月20日に3135円、21日には3835円まで暴騰し、その後も3600~3700円台で推移していたが、2月20日の巨額配当発表を言受け、一時、3315円までに急落、その後はNIPPOとの提携発表に加え、株式市場全体の軟調もあって、28日には一時、3175円をつけている。TOBの成立期待の後退、TOB失敗観測の広がりを示しているといえる。また、特別配当の「権利落ち日」となる3月5日に急落し、6日時点ではとうとう2777円まで下がった。

   前田建設は巨額配当の発表を受け、TOB期間を3月4日から12日に延長した。前田建設はTOBの旗を掲げ続けるのか、降ろすのか、予断は許さない。

   株主にとって特別配当はありがたいが、TOBを前提にした現在の株価が、今後どうなるかは不透明だ。また従業員や取引先など、株主以外のステークホルダーにとってのTOB騒動の功罪も、現段階では判断できない。

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