公募理事長「解任劇」から立て直せる? 沖縄県外郭団体ISCO、なおも火種

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   沖縄県と民間企業が出資して設立された財団法人「沖縄ITイノベーション戦略センター」(ISCO、那覇市)で公募理事長が任期途中で解職された問題が、さらに混迷を深めている。

   解職を決めた理事会を監督する立場の評議員会では異論が噴出。県議会でもISCOの対応を問題視する声があがっている上、解職された前理事長はISCOの対応によっては訴訟も辞さない構えを崩していない。そんな中でISCOは改めて理事長を公募し、後任が内定。さまざまな火種を抱えたままでの新体制発足になりそうだ。

  • 2019年11月26日に行われたISCO評議員会の議事録。前理事長の解職理由の欄が黒塗りにされている
    2019年11月26日に行われたISCO評議員会の議事録。前理事長の解職理由の欄が黒塗りにされている
  • 2019年11月26日に行われたISCO評議員会の議事録。前理事長の解職理由の欄が黒塗りにされている

県が約40%、民間企業が約60%を出資する外郭団体

   ISCOは県が約40%、民間企業が約60%を出資。日本経済新聞編集委員や慶大教授、調査会社のMM総研所長などを歴任した中島洋氏を初代理事長に迎えて18年5月に発足した。任期は20年6月まであったが、19年9月18日の臨時理事会で、県から出向している盛田光尚常務理事が解職提案の動議を出し、賛成多数で解職された。その後は盛田氏が暫定的に理事長を務めている。

   ISCOは解職理由を一般には公表していない。ただ、県の嘉数登・商工労働部長は19年9月30日の県議会で、

「ISCO事務局に対し、任期途中での現理事長職の常勤化と報酬増額を一方的に要求したことを初めとした幾つかの事由によってISCO事務局に混乱が生じていた」

などと答弁。中島氏は

「業務量が当初想定より圧倒的に多くなったので、100日では到底無理、非常勤100日では無理だと(常勤化を)提案したのを、歪曲して『個人の報酬を増やさんがために』と誹謗中傷している」

と反論している。

   この解任劇には異論もある。11月26日には、中島氏を解職した理事会を監督する立場の評議員会が開かれ、中島氏の解職取り下げを求める声が出た。20年2月27日に開かれた県議会の一般質問では、この評議員会の議事録が取り上げられ、かなり厳しい調子でISCOの対応を批判する声が出たこと明らかになった。

「これまでの対応について、お詫びもすべき」

   J-CASTニュースが入手した議事録によると、ある評議員は

「このような理由で、解職など考えられない。『なぜもっと早く私なり、親しい評議員に問題をシェアして介入してもらわなかったのか。言ってくれればすぐに解決できたでしょう』と(思う)」

などと解職の妥当性や、事態がこじれるまで放置していたISCO側の対応を疑問視。今後の対応について

「信頼関係があると証明できる方法として解職を取り消し、すぐに中島さんが辞任するとの形が一番良い。中島理事の今までの沖縄のIT分野への貢献、沖縄への愛情、ITの人脈に敬意をはらい、これまでの対応について、お詫びもすべき」

などと提案した。

   他の評議員からも、

「一般財団法人の理事長を任期の途中で解職するというのは、外から見ると、相当に大きな影響がある。今後のISCOの活動にもいい影響はない。もう一度、よく話し合ってほしい」
「お互い、納得するかたちでないと、事態は進展しないと思います」

などと困惑の声が相次いだ。

「この面談については今現在実現しておりませんけれども...」

   「解職取消し→自発的辞任」を提案した評議員は、

「東京にいる彼(編注:中島氏)の知人友人は、この事を知っている訳です。で、このまま置いておくと、ISCOがピンチになった時に助けてくれるって、そういう風にはならないのですよ、人と人の関係は」

とも発言。今回の解職をめぐる問題が本土にも広く知られることで、さらにISCOに悪影響が及ぶことを指摘した。

   議事録によると、この時点で盛田氏は「出来る出来ないかも含めて、概ね2週間後に示せる様なかたち」で対応すると応じている。

   だが、3か月以上経った現時点でも事態は進展していない。20年2月27日の県議会では、嘉数氏は

「評議委員会においては、いろいろ和解案というものも示されている。それに対してISCO事務局の方において、『理事長異動にともなう追加対応方針』というものをお示しして、前理事長と面談を求めているところ」

だと説明しているが、「この面談については今現在実現しておりませんけれども...」と続けた。

   中島氏は、解職が決まった19年9月18日の理事会の議事録案に(1)解職理由(2)どの理事が解職提案の動議を出したか(3)どのような審議が行われたか(4)採決の際に誰が賛成・反対したか、を記載して公表することを求めている。

   一方で、関係者によると、ISCO側が準備している「理事長異動にともなう追加対応方針」には、中島氏が求めている議事録の修正・公表や、評議員のひとりから提案があった「解職取消し→自発的辞任」は含まれておらず、中島氏に「アドバイザリーフェロー」に就任してもらう内容。ただ、この「アドバイザリーフェロー」という肩書きは、これまでにISCOのイベントで講師に登壇した人に与えられるような「名誉職」に近い性格のもので、前理事長を処遇するには不適切だとして反発。両者の条件が全く折り合わない状態だ。

後任理事長の待遇も「非常勤で年間100日程度の勤務、報酬の上限は年470万円」

   ISCOは19年12月4日、理事長を改めて公募することを発表。20年2月18日に、次期理事長が内定したことを地元紙の沖縄タイムスが報じた。内定したのは、20年2月にISCOが事務局を担当して開いたイベント「ResorTech(リゾテック)おきなわ国際IT見本市」で実行委員長を務めた稲垣純一氏。同紙の記事によると、稲垣氏は「組織固めに注力したい。ビジネスだけでなく、IT分野で若者や子どもたちの人材育成にも力を入れていきたい」などコメント。事実上内定を認めている。

   もっとも、嘉数氏は県議会の答弁で、

「新たな理事長は3月の理事会および評議員会の審議を経て決定する予定となっており、ISCOにおいては、新理事長候補は公表していない。新聞報道の出所についても不明としている」

と主張している。この「理事会および評議員会」が行われるのが3月5日だ。中島氏は、前出の議事録の問題が解決しなければ、盛田氏を名誉毀損の容疑で民事・刑事の双方で告訴する構えを崩していないが、交渉に応じる余地も残している。両者がどの程度歩み寄るかが焦点だ。

   新理事長に就任する稲垣氏としては、訴訟リスクを抱えた状態での新体制スタートになる。さらに、待遇は中島氏と同じ「非常勤で年間100日程度の勤務、報酬の上限は年470万円」。公募に当たっては内部でも「水準が低いのでは」という声もあったと報じられており(琉球新報、19年12月11日朝刊)、この点も懸案となる可能性もある。

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