乳業・菓子大手、明治ホールディングス(HD)の株価が低迷し、2020年2月下旬以降は15年以来、約5年ぶりの安値圏で推移している。
2019年4~12月期連結決算によって主力のヨーグルトの売れ行きが鈍っていることが確認されたことなどで通期業績予想の達成が困難との見方が広がり、下方修正リスクが意識されていることが背景にある。
主力事業の「発酵デイリー」
明治HDが2月6日に発表した2019年4~12月期連結決算は、売上高は前年同期比0.1%増の9511億円、営業利益は0.9%増の803億円、純利益は15.2%減の524億円。純利益については前期に計上した固定資産売却益の反動減の影響が大きいが、そうしたことは当然、業績予想に織り込んでいる。18年4~12月期連結決算における純利益の対通期計画進捗率が87.2%だったのに対し、19年4~12月期の対通期計画進捗率は77.7%と10ポイント近く劣後する。営業利益の進捗率も前年同期より4.4ポイント低いことが「今後、業績予想の下方修正があるのではないか」との見方を生んでいる。
事業別では大きく食品と医薬品に分けられる。2019年4~12月期の売上高でみると食品8割超、医薬品2割弱、営業利益でみると食品8割、医薬品2割というイメージだ。その食品の売上高の約3割を占める、ヨーグルト、牛乳、飲料の「発酵デイリー」が主力事業ということになる。19年4~12月期連結決算によれば、「加工食品」「菓子」といった食品の6部門のうち、売上高は「発酵デイリー」(前年同期比1.8%減)、「その他国内子会社」(4.0%減)の2部門が減収、営業利益は「発酵デイリー」(5.9%減)、「菓子」(2.2%減)、「その他国内子会社」(12.9%減)の3部門が減益だった。食品事業を牽引するべき「発酵デイリー」の業績が思わしくないことが変調の主因だ。
「事業ごとに好不調があり...」の分析も
明治HDは強いブランド力を持つ「明治ブルガリアヨーグルト」によって長年、ヨーグルト市場で存在感を発揮してきた。近年は「LG21」「R-1」など「プロビオ(またはプロバイオ)ヨーグルト」と呼ぶ、「善玉菌で腸内を整える」などとより機能性を打ち出した商品が事業を引っ張っている。ただ、少子高齢化の逆風の中、健康志向のライバル商品が増えていることがヨーグルトの苦戦を招いている。
2019年4~12月期連結決算の発表後、大和、SMBC日興、野村の国内3大証券各社が投資判断を維持しつつ、さみだれ式に目標株価を引き下げた。これによってじわじわと投資家の不安心理が拡大したようだ。20年2月19日配信のリポートで目標株価を9800円から8300円に引き下げたSMBC日興証券は、「プロバイオヨーグルトの減収に歯止めがかかっていないことや、医薬品の薬価引き下げなどもあり、業績に先行き不透明感がある」と指摘。野村証券は2月26日に配信したリポートで目標株価を8200円から7800円に引き下げ、「事業ごとに好不調があり、全体業績に力強さがない」と記した。株価が大きく反転するには来期に発売する新商品がブームを起こすようなことが必要となりそうだ。